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20の美術展

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今年、20の美術展に足を運ぶことを目標に掲げています。 ぎりぎりに駆け込んでいたり、筆が遅くてゆっくり推敲していたりと、会期末が終わってから公開となることも多いですが、展覧会の感…
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記事一覧

4. 奈良原一高への追悼 『消滅した時間』展 【前編】

六本木のAXISビル2階のタカ・イシイギャラリーで(現時点では)開催中の、写真家 奈良原一高の 『消滅した時間』展。2020年4月4日まで。私の訪れた3月初旬には、首都圏の多くの美術館が臨時休館していて、どちらかといえば密集率が低いと考えられるギャラリーにはその状況でも開館を続け健闘しているところが多かった。 この記事では、奈良原本人の言葉を適宜引用しながら彼の足跡を辿り、展示作品が撮影された1970年代より以前の奈良原の姿を紹介していく。 奈良原一高を知って奈良原一高とい

3. 「DOMANI・明日2020 傷ついた風景の向こうに」 忘却できない傷の痕跡①

「20の美術展」シリーズ3本目の記事として、現代作家のグループ展を取り上げます。テーマは「傷ついた風景の向こうに」。世界そして自分の抱える傷をどのように癒していけばよいのか、作品は私たちに問いかけているように思います。忘却できない傷の痕跡を抱えて生きていくことについて考えました。 現代のアーティストの作品と出会える嬉しさ22回目を迎える「DOMANI・明日展」の今年のサブテーマは「傷ついた風景の向こうに/ Landscapes in Our Age: Scarred and

2. 「やきもの入門」展

西洋美術を優先して普段あまり足を運ばない、また知識不足の否めないアジアの美術も鑑賞しようと今年は意気込んでいるので、前記事に続いて日本美術です。 やきものは、元々すっかり門外漢だっただけに、記事を書くためにもせっかくだから勉強しようと、鑑賞中の記憶を必死の思いで呼び戻しながら、時には不明点を調べ、図録の写真をじっくりと眺め、推敲しながら書きました。15000字を超える長文なので、お好きな章からお読みいただければと思います。 本展の見どころ出光美術館といえばやきもので有名

1. 「雪松図と明治天皇への献茶」展

応挙の第一印象を思い出す中学生の頃、美術の先生が「円山応挙という人は本当に絵が上手くて、雪を描き残したんですよ。描き直しができないから凄いことですよね。」とおっしゃっていたのをよく覚えている。 教科書の「雪松図屏風」を見るとたしかに、輪郭線も白塗りした跡もなく、ほんわりとした余白が幹や枝に、積もっている。この印象は現物を見るとまた違ったものに変わったのだけれど。 「国宝 雪松図と明治天皇への献茶」展では、この名作が展示されていた。三井記念美術館では年末年始恒例の公開というこ