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よく分からない日本酒のラベルの読み方 part1.製造年月って?

はじめに

日本酒を選ぶ時に何を基準に選んだらいいのか分からないし、ラベルに書いてあることがヒントになったらいいのにな、と思っている方は多いんじゃないでしょうか?
そこで、この「よく分からない日本酒のラベルの読み方」では、皆さんが日本酒を選ぶ際のヒントとなるポイントを一つずつ解説します。

第一弾は、「製造年月」についてです。
これ、お酒が造られた時期じゃないんですよ。

私なりの考えや想いも入れながら、分かりやすくお伝えします。

製造年月って何?

では早速、製造年月は何なのかをお伝えします。
ずばり、「製造年月とは、蔵から出荷する準備が整った時期」です。

造られた時期じゃないの?と思われた方が多いんじゃないでしょうか。
そう、これ分かりにくいんですよ。
できれば造られた年(ビンテージ)と、出荷された時期という表記にしてほしいなぁと思っています

造られた日じゃないの?とか、出荷された日じゃないの?と思われた方が多いんじゃないでしょうか。
そう、これ分かりにくいんですよ。
できれば造られた年(ビンテージ)と、出荷された日(製造年月)という表記にしてほしいなぁと思っています。

出荷準備が整った時期とは?

簡単に言えば、基本的には瓶詰された時期です。昔は搾った後はタンクで貯蔵して、出荷前に瓶詰めすることが多かったから。でも最近は、搾った後すぐに瓶詰めして、瓶の状態で飲み頃になるまで蔵で貯蔵(=瓶貯蔵)することも増えてきました。そのため、瓶貯蔵のお酒の場合は、出荷月を製造年月として記載するケースがほとんど。
このダブルスタンダードがややこしい。
瓶詰した月でも、出荷した月でも、どちらでもいい、という定義になっていますから。

『龍水泉 不動』出荷月は2024年2月
『龍水泉 不動』ビンテージが「2022」と表記されている

だから、この上の写真のように、ビンテージ(醸造年度)を表記している日本酒も増えています。これだと、2022年に造られたお酒だけど、出荷したのは2024年の2月だよ、と分かります。
搾りたてのピチピチとした若い新酒ではなく、1年半くらい熟成されているので深みも出ているのかなとか、味わいも落ち着いてきているのかな、と想像ができます。。

造られた時期と製造年月に開きがある場合の注意点

造られた時期と製造年月に開きがある場合は、出荷されるまでどんな環境で管理されていたか、ということが味わいに大きく影響するので注意が必要です。

先ほどの西暦でのビンテージ表記の他には、この写真のように「BY」という表記を見かけた方も多いのではないでしょうか?
これは、Brewery Yearの略で、醸造年度を指します。

2本並んだ「射美」ですが、左はBY2=令和2年度、右がBY3=令和3年度です。
日本酒の醸造年度は、7月1日から6月30日までが区切りとなっているので、左側の醸造年度はBY2=令和2年度=2020年7月1日~2021年6月30日なので、造られた時期と製造年月が同じことが分かります。(右側の醸造年度も、BY3=令和3年度=2021年7月1日~2022年6月30日で、造られた時期と醸造年度が同じ)

一方で、一つ前の写真でご紹介した「龍水泉」は、造られた時期と醸造年度が約1年半くらいの開きがあります。
出荷するまでの間に、蔵で貯蔵された温度は常温なのか、冷蔵なのか、はたまたマイナス5℃なのか、が大事になります。
常温ならかなり熟成感が強く出ているでしょうし、マイナス5℃ならフレッシュ感もまだ残っていそうだ、と想像できます。
山廃や生酛造りで、あまり削られていないお米を使った純米酒などでしたら常温で熟成することにも向いている一方、生酒や活性にごり酒や、たくさん削ったお米を使った純米大吟醸(大吟醸)でしたら、マイナス5℃で貯蔵することで、繊細な味わいを保っているものを選びたいです。

蔵元出荷後に1年間マイナス5℃で熟成させた「石鎚 夏純米」(製造年月は '23.6)

造られた時期と製造年月が同じでも、古い場合の注意点

さらに、造られた時期と製造年月が古い場合は、出荷された後にどんな環境で管理されていたか、ということが味わいに大きく影響するので、より注意が必要です。
スーパーなどで、(日光が当たる場所は言わずもがな)蛍光灯の光が強い場所で常温で管理されているものは、出荷直後の味わいからはかなりかけ離れて劣化が進んでいるものがほとんど。
5℃程度の冷蔵庫でも、生酒(活性にごり酒も)や純米大吟醸(大吟醸)などの繊細な味わいを特徴とするお酒は、劣化が進みやすくて長期保管には向きません。
日本酒が凍り始める一歩手前の温度である「マイナス5℃」が、フレッシュさを保ちつつ熟成による深みや丸みを同時に生み出すことができる最高の環境だと感じています。

ビンテージ表記のみとなった「零響 -Absolute 0-

実は製造年月は書かなくてもよくなった

令和5年1月1日から適用された法改正によって、製造年月表示の改正も行われました。これによって、今までは製造年月は必ず書かなくてはいけない項目(必要記載事項)だったのが、書いても書かなくてもよい項目(任意記載事項)になりました。
今後はワインのようにビンテージだけが表記されたものが増えていくかもしれませんね。

日本酒王子のひとりごと

「よく分からない日本酒のラベルの読み方」の第一弾として、今回は「製造年月」についてお伝えしました。
実は22年前、アメリカ留学中に、ナイアガラの滝のそばにある日本料理屋で飲んだ日本酒が、ほんとうに衝撃的だったんです。
大手酒造メーカーの純米酒だったんですが、一口含んでみて「うわ、マズっ!」と。300mlの小瓶(未開封)でしたが、製造年月を見たら3年前。
売れなくてずっと常温で放置してあったんだろうなという味わいに、がっかりしました。
と同時に、初めて日本酒を飲む人にこれが日本酒だと思ってほしくない、本当の日本酒の美味しさを広めたい!という使命感が芽生えて、今の仕事を始めるきっかけになりました。
これからも、みなさんに日本酒のファンになってもらえるように、発信をしていきます。
次回は、「よく分からない日本酒のラベルの読み方」第二弾として、「生、生貯蔵、生詰って何?」をお届けします。

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