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第128回 ボーヴォワールを忘れない(クロアチア)


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1月9日は、『第二の性』の著者シモーヌ・ド・ボーヴォワール(1908—1986)の誕生日だ。そして、「女性の自由のためのボーヴォワール賞」の授与日でもある。
2024年の同賞は、コートジボワールのマリー・ポール・ジェグ・オクリが受賞した。アフリカのフェミニストで、農学者。「女性の権利のためのコートジボワール連盟」を通じて、女たちのための農業の手法を開発し、提供している。女たちが野菜を生産販売して得たお金は、子どもたちの教育費となり、それが新たな解放を生み出しているという。ボーヴォワールの提唱した「経済の男女平等」への闘いの実践者であることが受賞理由だった。
この賞は、2008年、ボーヴォワール 生誕100年を記念し、ジュリア・クリステヴァ(ブルガリア生まれのフランスの哲学者)によって創設された。毎年、女性の自由の擁護と発展のために世界的な貢献をした個人、団体、作品、活動に与えられる。副賞160万円。

ボーヴォワールの『第二の性』は、フェミニズムのバイブルだ。和訳本を私が手にしたのは、70年代、就活を考え始めた大学3年の時だった。『第二の性』は、女たちが、この社会でどう受け止められてきたかを生物学的、歴史的に究明していた。「女であることの不遇」に直面していた私は、苦しくなって読み進めなかった。先日、もう一度、本を開いてみた。
プラトン「女ではなく男につくってくれたことで、神に感謝した」
アリストテレス「生まれ出るすべての存在において、男性的なものである運動原理の方がすぐれていて、崇高である」
聖トマス「女は男の支配下に生きる定めであって、女には自分の主人に対していかなる権限もないのは明白である」
ルソー「女は男に譲歩し、男の不当な仕打ちにも耐えるようにできているのだ」
バルザック「女の運命と唯一の栄光は男の心をときめかすことである」
オーギュスト・コント「女とプロレタリアは行動の主体にはなりえないし、なるべきでもない。また、なりたいとも思っていないだろう」
クソーッ! 怒りで、体が熱くなった。

今日のポスターは、2008年9月26日、クロアチアの首都ザグレブで催された「ボーヴォワール生誕100周年記念大会」を知らせたもの。主催したクロアチア女性学センターの代表ラダ・ボリッチから寄贈された。女らしくあれと決めつけた先人たちに対する彼女の叫び「私は私らしくあるという大冒険を引き受けます」が、フランス語とクロアチア語で書かれている。

(三井マリコ/「i女のしんぶん」2024年3月10日号)


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