ザ・ライフルマンを見たよ(大ネタバレあり)
■ライフルマンの感想
・あらすじ
平和なラトビア人の少年、アルトゥルス。
父と一緒に、汽車に乗って帰ってきて母と共に休んでいたところドイツ軍人がやってきて、家に隠れていたロシア軍人(ラトビア軍人かもしれない)を見つけ出して連行しようとする。
母は、吠え続けるワンチャンと共に撃ち殺されてしまう。
ドイツへ復讐のため、兵役に志願する父とアルトゥルス。
高齢すぎると一度は断られる父だったが、15年の兵役と10以上の勲章を持つ歴戦のライフルマンだった。
兵士となったアルトゥルスは17歳にもならない少年だった。
兵士としての訓練も未熟なまま、訓練所はドイツ軍爆撃機に襲われロシア軍の一員として戦場へ運ばれることとなる。
戦場にあっても笑いが起こるほど、まだ若い男たちで構成された隊。厳しく指導する、かつての面影を失った軍人としての父。
装備も訓練も未熟なまま駆り出された戦場で、アルトゥルスは隊の仲間たちと共に敵の塹壕へ突撃する。
爆撃で破れた耳のまま、アルトゥルスは混乱する塹壕の中で一人の兵士を刺し殺したところを殴られ気絶してしまう。
目を覚ますと戦いは終わっていて、父と仲間たちは勝ったようだった。
初めて自分が刺殺した兵隊を前に呆然とするアルトゥルス。
仲間たちと歩く帰り道は、勝利の歓喜に満ちることもなく全員がくたびれ果ててていて、思い出すのはあの時撃ち殺された愛犬と母の姿ばかりだった。
基地にたどり着いても与えられるのは、どれだけ空腹でも美味しいと思えない食事で、夢うつつにアルトゥルスは自分が刺殺した兵士が母になってしまっている幻覚を見る。
部屋の中、足の踏み場もないくらいに詰め込まれた仲間たちは皆が悪夢にうなされ、アルトゥルスはネズミを手に取り口へ運ぼうと考えてしまうほど空腹だった。
時代は第一次世界大戦の頃、ラトビア。
700年におよぶ他国の支配が続くラトビアは、第一次世界大戦の頃にはロシアの一角とされ、ロシア化制作が進められラトビア文化の維持や表現が禁止されていた。
再び戦場へと戻されたアルトゥルスは、狙撃兵の襲撃を受けるも、訓練時代からの親友と共に狙撃兵の迎撃部隊へ志願する。
指揮官である父と共に狙撃兵の迎撃へ出たアルトゥルスは、一人の兵士を親友と協力して仕留めようとするも、いざ首を切るという時になって躊躇してしまい捕らえた敵兵に引き金を引くチャンスを与えてしまう。
敵兵は仕留めたものの、銃声によって居場所を知らされてしまったアルトゥルスは狙撃兵によって首を打ち抜かれてしまう。
冷徹だった父は、打たれたアルトゥルスのため足を止め、重傷の息子を抱えて塹壕へと引き返す。
動脈の横2ミリを弾丸が貫いていたアルトゥルスは奇跡的に一命をとりとめるものの、口を開くこともままならず、戦傷者病院での日々を過ごすことになる。
やがて顎のギプスも取れた頃、今だ前線で戦い続けていた親友が病院を訪れ、状況を教えてくれる。
ドイツ軍が迫り、アルトゥルスたちロシア軍は激しい戦いを強いられているらしい。
傷が癒え、回復したアルトゥルスは久しぶりの親友との会話で元気を取り戻す。
前線へ戻ったアルトゥルスは、狙撃兵として構える父の側でライフルを渡され、敵兵を撃てと言われる。
打てなかったアルトゥルスだが、既に父は30人以上を撃ち殺していた。
ガス兵器の使用が許可されていた当時。
ガス攻撃を受けたアルトゥルスたちは命からがら生き残る。
ガスの中、父の姿を見て安堵する親友とアルトゥルス。
再び前線の塹壕へ戻ったアルトゥルスは、父の姿が見えないことに気づき、狙撃兵として父が備えているはずの穴倉へ這っていくと敵兵と刺し違え息を引き取っている父の死体を見つける。
父の葬儀を終え、アルトゥルスたちは雪原の森林地帯へ派遣される。
シベリアの精鋭部隊と共に最前線へ攻め入る志願兵を募る司令官のもとへ、真っ先に志願するアルトゥルス。
親友に「通信兵になれ、前線を離れろ」と言われるアルトゥルスは渇いた笑いで冗談を返し、自嘲気味なアルトゥルスを見かねた親友は共に前線へ志願する。
厳しい前線で見事に作戦を成功させたアルトゥルスたちは、敵兵たちの凄惨な死に際や荒れた味方たちの間にありながら、仲間の笑顔とわずかに美味しい食事で勝利の喜びを味わう。
前線基地へ親友の母からの手紙が届き、家族を懐かしむ仲間たち。
前線から引き返せとの命令を聞いたアルトゥルスは、まだ戦場へ居残ろうとする意思を見せた。
前線基地から後退する途中、広い広い雪原の中で攻撃にさらされたアルトゥルスたちは身動きが取れなくなり、親友が爆撃に晒されてしまう。
アルトゥルスにとって最後の大切な人も、あっさりと死に、アルトゥルスには死を悼む余裕も与えてもらえなかった。
なんとか前線を離れて帰還したアルトゥルスたちは大勢の味方の死体の中から家族を探す人々に囲まれ、アルトゥルスはなんとか親友の身体から拾い上げた勲章を届ける。
助けに来なかったロシア軍。革命家レーニンの知らせによってアルトゥルスたちは軍の為に戦うのを辞めることを決意する。
父を探しにやってきた戦傷者病院のマルタ。
アルトゥルスは、マルタと手紙を交わす。
アルトゥルスは、部隊の仲間たちと共に革命軍として戦うことになる。
革命軍として、ずっとマシな日々を過ごすアルトゥルスだったが、訓練時代からの顔見知りはたった二人になってしまった。
ある日、友達の一人が革命軍の裏切り者として処刑されることになるも、アルトゥルスは処刑命令を聞けず、捕らえられてしまう。
訓練時代からの上官ともう一人の友達の機転で助けられたアルトゥルスは、革命軍を抜け、マルタの元へ逃げることになる。
逃げる途中、革命軍の追っ手によって友達は撃ち殺されてしまうものの、アルトゥルスは、なんとかマルタの元へたどり着く。
マルタと共に友達の遺体を弔ったアルトゥルスは、マルタへ母の形見である指輪を贈り、マルタの農家を離れた。
ラトビアへとたどり着いたアルトゥルスは、友達が志願するはずだったラトビア解放軍として志願することにする。
兵士になった頃の自分よりも幼い子供が多くいるような解放軍の中、アルトゥルスは指揮官として戦うのだった。
本当の戦場に委縮して逃げ出す子供たちも居る中、ひとり銃弾を恐れず立ち上がり打ち返してみせるアルトゥルス。
次第にアルトゥルスの指示に従う子供たちが戦いだす中、アルトゥルスは腹に銃弾を受けてしまう。
死体と雪原の幻覚を見る中、アルトゥルスは神への祈りを捧げるものの、最後には立ち上がりライフルを構え、仲間たちと共に戦場へと進んでいくのでした。
・感想
あんまりにも悲しくて泣いちゃった。
当時のラトビアは物凄く長い間文化も人種としても支配され続けて、農奴か兵士として戦うばかりだったらしく、特に一次大戦の時は人口が半減するほど被害を受けた上に、第二次世界大戦を迎える頃にはソ連の統治下になってしまったらしいです。
アルトゥルスの経験は原作者グリーンスさんの記憶から描かれているらしくて、とにかくどこへ行っても戦いばかり。縁が出来れば死んでいくのを見届けるしかないんだったんろうなって……。
印象的だったのは、革命軍として汽車に乗っている時に自分たちの噂話をする老人を見るシーン。
「ロシア軍(アルトゥルスたち)は腰抜けだ、ドイツ人(敵国の兵士)が来ればしっぽを巻いて逃げ出す。あんな奴らのせいでワシらはこんな質素な生活をしている」と老人同士語り合う一人の男性。アルトゥルスの視線に気付くと汽車を急いで降りていったものの、窓の外からアルトゥルスへ暴言を吐き捨てて去っていく。一部始終を見ていた他の乗客の男性が「キミたちがきてくれてよかった、感謝しているよ」と声をかけてくれるけれど、男性が見ていたのはアルトゥルスが手に持っているクッキーで、手渡してあげると男性はそそくさと去っていってしまう……。
アルトゥルスたちがどんな人生で、どんな思いで戦ったか、どんな経験をして今ここにいるのか誰にも伝わっていない……それだけじゃなくて、アルトゥルスたちを気遣う余裕もなく、大人一人がクッキーひとかけらを欲しがるほどに貧しい国になってしまっていることが一度に感じられるシーンで本当に切なくなっちゃった。
戦場のシーンはとにかく汚い、かっこよさはない、射撃も構えも全部付け焼き刃で本当に本当に駆り出されてしまったアルトゥルスたちが一般人で、現代の訓練された特殊部隊~!みたいな人たちとは全く違う人たちが戦っていたんだなって感じさせられて何度戦場のシーンが出てきても切なくて辛かったです。
で、なんでザ・ライフルマンを見ることになったんだっけ?
私は一個も覚えていません。
とにかくつらかったし、切なかったし、とても心に来る作品でした。
ラトビアという国、第一次世界大戦をこんな風に感じた人たちが居たこと、戦争がどれだけつらいことだったか……そんな色々が感じられる一本です。
おしまい
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