未来予想図
2022.5.30
「この人はどんな大人になるのかな」。このような想像をした経験はないだろうか。僕は学生時代に人間観察をしながら、クラスメイトがどのような大人になるのか想像する癖があった。これは、同級生の性格を分析しながら将来像や職業について分析することを指している。生徒会長に立候補する生徒を観察しながら、学校の制度を変えたくて立候補するタイプなのか、それとも成績のために立候補するタイプなのか考察してみたりする。それだけでも確実に未来予想は変わってくる。前者は学園生活のなかで1度も出会う機会はなかったが、そんな聖人君子が存在したとしたら、100年に1度の逸材で内閣総理大臣にまでは出世しなくても政治家にはなれていたのではないかと想像する。ちなみに成績を念頭においた立候補生の未来予想は困難を極め、「進学校に進学するだろうな。」程度の漠然とした予想くらいしか出来なかった。あまりにも普通すぎて判断材料に乏しいからだ。学生時代に夢中になっていたサッカーでも癖は治らなかった。サッカーが上手な同級生を眺めながら、「彼は将来、Jリーガーになるのか。」なんてことを予想したりしていた。一緒に練習をサボっている隣の彼は塾にも通っていて、成績も優秀で「親は医者だから弁護士でも目指しているだろうな。」とか冷静に分析を展開したりしていた。基本的に小学校、中学校は学区で分けられる。それは、学校での成績は全く関係なく集められることを意味する。高校生になると成績によって学校が決まる。だから、小学校や中学校のクラスメイトの未来予想図を描く方が可能性を感じて面白い。高校生になると薄っすらと未来像が投影され、夢を諦める者が出てくる。そして10年の時が経過し、元同級生達の「答え合わせ」が始まってきた。ヤンチャでよく先生に叱られていたチビ男子はネオン車が似合うヤンキーパパに。成績優秀でヤンチャなクラスメイトとつるんでいた器用な彼は、大手一流企業で働いていたりする。インスタグラムの彼も予想通りキラキラした雰囲気だ。眼鏡をかけていて物静かな雰囲気だった隣の席の彼女は宅配業者の事務職に。金に髪を染めていたヤンキー彼女は予想通り、ヤンママに大変身。5歳の子供がいたりする。そして、成績優秀で美男美女カップルの美女は広告代理店で受付嬢をしているとの風の噂をキャッチした。これも予想通りで、なんとも彼女らしい。周囲は結婚を意識する年齢に突入し、焦っているそうだ。高校時代のマドンナは早くに結婚していて、男子とは一切話さなかった女子は実家で暮らし、堅実に働いている。周囲の未来予想図の答え合わせの感想は予想通りの展開と言えそうだ。僕があの頃に予想した未来は、なんの驚きもないまま、普通に10年の時が過ぎ去り、想定内の世界が広がっていた。あの頃、サッカー部でストライカーだった彼はJリーガーになることはなく、食品会社の営業職になった。僕の学校での日常は思ったよりも平凡で普通だったということになる。それは日本中どこにでもある普通の風景だ。特別なんてありやしない。だから僕はバランス感覚を保ちながら、すこしでも社会に抗ってみようと思う。10年後も常に常識を疑っている存在でいられるように。
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