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ネオ江戸社会

2022.2.9

もし願いがひとつ叶うなら、江戸時代にタイムスリップしたい。その理由は、江戸時代の暮らしを体験して、令和の時代に戻ってきて事業の改善に着手したいと考えているからだ。褌姿で飛脚をさせられるのは勘弁だが、江戸時代のファストフードだった鮨や天ぷらと日本酒のマリアージュを江戸っ子の粋として体験できたらどれほど幸せなことか。そんな冗談はさておき、日本酒の仕事をしていると室町時代から現代までの歴史を探求する機会が多くある。長い歴史のなかでも江戸時代は特に魅力的な時代だったと想像している。そもそも江戸時代はいつの時代を指すのか。江戸時代は徳川家康が征夷大将軍に任じられ、江戸幕府を開いた1603年から大政奉還によって王政復古が行われた1867年までの265年間を指している。関ケ原の戦いで徳川家康が勝利し、幕府を開いてから日本は長期間に渡り平和状態が維持されてきたという歴史を持つ極めて稀な国なのだ。欧州諸国や中国、インドなどの歴史と比較しても、これほど長期間、平和状態を維持したという歴史は他にはないそうだ。今、日本は戦後77年なので、江戸時代では約4倍の時間、平和な時代を維持した計算になる。戦のない平和な時代が継続中という観点で分析すると現代と江戸時代の状況は似ているかもしれない。つまり、現代に生きている私たちにとって江戸時代は参考になる点が多いのではないかと考察している。今は新型コロナウイルスの影響により海外への渡航制限をかけられているため、世界と日本の距離が離れていると感じる。この状況は江戸時代の鎖国と似ていると思う。また、2020年からはビニール袋の有料化が実施されたりと環境に配慮するような取り組みが推進されはじめてきた。江戸時代は資源が貴重で物資を再利用するのがスタンダードだったと考えると、これも現代と江戸時代の立派な共通点のひとつだろう。江戸時代ではリサイクル精神も強かったため、経済成長率は年/0.3%程度だったそうだ。人が物を買わないから経済成長率が上がらないのも当然のことだ。ただ、2021年の日本の経済成長率もたったの年/0.8%程度で、この経済状況も似ている。そして、2018年には隣国である韓国にも1人当たりのGDPも抜かされてしまった。これは少子高齢化による労働人口の減少と生産性の低下が原因に挙げられている。だからこそ、限りある資本と物資を無駄なく活用していくことが今後の日本社会では求められてくるのではないかと思う。まさに江戸時代から学ぶ「循環型社会」の実践だ。それが「持続可能性」の追求にも繋がると思う。ネオ江戸時代の到来も意外と悪くないのかもしれない。循環型社会の重要性など、20世紀の価値観では支持を集められなかったモノやサービスなどが、21世紀の社会では個性として認められ、経済的にも自立できる可能性が秘められていると思う。江戸時代と現代の状況は共通点が多く、日本は江戸時代に戻っているような気もする。これをネガティブに捉えるか、ポジティブと捉えるかで世界や社会での「在り方」そのものが大きく変わってくると思う。世界の国々と経済成長という観点で比較を繰り返すのも確かに重要だが、もっと多角的に経済を考察し、文化的な数値で経済指数を計測していく必要があると思う。

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