断る理由が見つからない


「明日のシフト代わってくれない?」


(嫌だぞ…。)


脳みそが高速で回転する。一刻も早く、断る理由を見つけなければ。


(…。)


明日は何もない。断る理由が見つからない。だが早く断る理由を言わなければ付け込まれる。

僕の目が泳ぐ。


その瞬間、相手の口角が少し上がるのが見えた。「こいつはいける」と悟った表情。圧倒される僕。


「まぁ…全然…はい…笑」


次の瞬間、感謝の言葉もほどほどに、ものの数秒で明日の出勤時間と退勤時間が伝えられた。

非常に悔しい。


「あ、でも…」とスマホを取り出し、予定を確認するフリをするも時すでに遅し。

「まぁその時間ならギリギリ間に合うか…。」

せめてもの抵抗として、ありもしない予定に追われているフリをして、本来予定があったにも関わらず、無理をして仕方なく出勤する状態であることを独り言でアピールし、相手に罪悪感を与えようと試みる。


全く手応えが無い。


そもそも直前でシフトを変わってくれないかと図々しく頼んでくる人間に対して、心のデリケートな部分への攻撃は効果がない。ペリッパーにマッドショットを撃った時のことを思い出した。


以下、さまざまなウソ断りに関する考察。
全ては有意義な休日のため。


・ライブあります断り
断りやすさ  ★★
バレにくさ  ★★
嫌われにくさ ★

芸人にとってのライブの重要性が伝わりづらく、断る理由として弱い。仮にTwitterなどを検索されたら嘘だとバレる。あと、本当にライブがある時は意気揚々と断っているため、テンションを比較されるとすぐバレる。


・田舎から母親が来るんです断り
断りやすさ  ★★★
バレにくさ  ★
嫌われにくさ ★★★
常套句として浸透し過ぎているため疑われる確率は高いが、相手も親族まで出されると引き下がらざるを得ない感が出るため断れるのは断れる。


・荷物が届くんです断り
断りやすさ  ★
バレにくさ  ★★★
嫌われにくさ ★★
どうしてもその日受け取らなければならない物かのか、置き配ではダメなのかなどの質問に対する回答も用意しておかなくてはならない。かなり先の予定には使いづらい。


・祝結婚式断り
断りやすさ  ★★★★★
バレにくさ  ★★★
罪悪感    ★★★★★

かなり先の予定でも使えるしほぼ確実に断れる。後日結婚式について質問された時のために、新郎新婦との関係性の設定や、式に関するエピソードトークは作り上げる必要がある。人の人生のターニングポイントとなるような行事を、断るためだけに空想上で作り上げて執り行うことに対する若干の罪悪感はある。


・火災報知器点検断り
断りやすさ  ★★★★★
バレにくさ  ★★★★★
気軽さ    ★★★★★

家の火災報知器の点検に立ち会わなければいけないと言って断る。込み入った設定を用意する必要がなく、誰でも気軽にサクッと断れる。また、あまり浸透していない断り方のため疑われる可能性も低い。よく利用する。


・マラソン大会出場断り
個性    ★★★★★
汎用性   ★★★★★
健全性   ★★★★★
マラソン大会にエントリーしていると言って断る。むしろ応援してもらえる。明日朝が早いと言って、夜の飲み会の誘いなども断れる。


・体力の限界断り
個性    ★★★★★★★★★★
汎用性   ★
健全性   ★

いかにも疲れているフリをして、頼み事などとてもできない雰囲気を醸し出す作戦。幸い僕は顔色が悪いため、僕が肩を落とし少し前屈みですり足気味で出勤してきたら大抵の大人は心配してくれる。あまり多用し過ぎると嫌な誘いだけではなく、ありとあらゆる誘いに誘われなくなるから注意しよう。


みんなも自分に合った断り方を見つけよう!

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