見出し画像

金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案の調査(NHK党浜田聡参議院議員のお手伝い)


はじめに

 こんにちは、さかさきです。今回は「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案」の調査を行います。

金融商品ってなに?

金融商品とは

 金融商品は、銀行や証券会社、保険会社等の金融機関が提供したり仲介したりする、株式や債券、投資信託、預貯金等のことです。最近だと、岸田政権が「新NISA」を導入し、話題を呼んでいます。日本人のほとんどが銀行に口座を開設し、自分たちのお金を預けたり、引き落としたりしています。全てのお金を家に保管しているというリスク100%の人間はいないでしょう。雑な感じで言ってしまうと、「お金がお金を生み出す商品が金融商品」と言えるでしょう。

投資信託とは

 日本には、多くの金融商品があります。代表的な商品に「投資信託」というものがあります。まず、投資信託とは何でしょうか。投資信託協会によれば、「一言でいえば、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品」です。
 日本人はよく「投資はギャンブルだ」とか「投資で一夜にして借金地獄」など、「それ、何の○シジマくん?」みたいなイメージがあります。確かに、株式投資は一瞬の値動きで大金が動きます。そこに一般人が飛び込むと大損をこいてしまいます。その運用を、投資の専門家にお任せして、自分たちはまとまったお金を支払っていくスタイルが投資信託です。投資信託も株式なので、元本保証がされた商品ではありませんが、運用はプロに任せ、月々まとまったお金を積み立てるだけなので、めちゃくちゃ損をするというのは少ないかと思います。(その代わり、大きな利益を短期で得ることはないですが)ちなみに、新NISAも投資信託を対象商品にしており、「S&P500」「オールカントリー」などの商品が人気です。

金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案について

経緯と背景

 今回の法律案の概要に、「我が国資本市場の活性化に向けて、資産運用の高度化・多様化及び企業と投資家の対話の促進を図りつつ、 市場の透明性・公正性を確保するため」、様々な制度を整備すると書かれています。
 資産運用や資本市場に関する対応は、岸田政権時代で活発化しています。2022年11月に「資産所得倍増プラン」を立ち上げました。日本の「家計金融資産の半分以上を占める現預金を投資に繋げることで、持続的な企業 価値向上の恩恵が資産所得の拡大という形で家計にも及ぶ「成長と資産所得の好循環」 を実現させる」という形で、以下の目標を立てました。

① 5年間で、NISA総口座数(一般・つみたて)の 倍増(1,700万から3,400万)、NISA買付額の 倍増(28兆円から56兆円)
② その後、家計による投資額(株式・投資信託・ 債券等の合計残高)の倍増を目指す。これらの 目標の達成を通じて、長期的な目標として資産 運用収入そのものの倍増も見据える。 

出典:金融庁「資産所得倍増プランについて


参照:金融庁「資産所得倍増プランについて」

当該プランには、新NISAの恒久化と拡充があり、個人が投資する上で、信頼できるアドバイザーが必要という考えから、

<中立的なアドバイザーの見える化>
• 機構がアドバイザーの中立性を認定。 ※ 認定中立アドバイザーの支援策(補助金等) も検討。
• 安定的な資産形成に資する商品(例えば、つ みたてNISAやiDeCo)に対象を絞った投資助 言業の登録要件の緩和を検討。 ※ 当局の監督体制の整備を併せて検討。

出典:金融庁「資産所得倍増プランについて

安定的な資産形成に資する商品(例えば、つ みたてNISAやiDeCo)に対象を絞った投資助 言業の登録要件の緩和を検討」と、今回の法律案につながる内容も記載されています。
 その後は、2023年9月には、ニューヨークで「資産運用特区を創設」することを明言したり、12月には「資産運用立国実現プラン」を発表したりと、こと資産運用に関する金融政策に関しては、積極的に進めています。

投資運用業の新規参入の促進

 さて、法律案に入りますが、最初の改正ポイントは以下のようになります。

ミドル・バックオフィス業務に係る業の創設と 投資運用業の登録要件緩和

 投資運用業者からミドル・バックオフィス業務(法令遵守、計理等) を受託する事業者の任意の登録制度を創設。行為規制(善管注意 義務等)等を適用し、当局により直接モニタリング 【改正金商法第66条の71等】

 当該登録業者に委託した場合には、投資運用業の登録要件を緩 和(人的な体制の整備) 【改正金商法第29条の4第1項第1号の2等】

 投資運用業者が金銭等の預託を受けない場合は、資本金要件を 引下げ(5000万円→例えば1000万円) [政令改正事項]。そのため、 投資運用業の登録時に預託の有無の記載を義務付け 【改正金商法第29条の2第1項第5号の2】 運用(投資実行)権限の全部委託を可能とする

 投資運用業者が、ファンドの運営機能(企画・立案)に特化し、 様々な運用業者へ運用(投資実行)を委託できるよう、運用 (投資実行)権限の全部委託を可能とする 【改正金商法第42条の3第2項、改正投信法第12条等】

 運用(投資実行)権限を委託する場合には、委託元(ファンド の企画・立案をする投資運用業者)が運用の対象や方針を決 定し、委託先を管理することを義務付け 【改正金商法第42条の3第2項】

出典:金融庁「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案

 まず、「投資運用業」とは何でしょうか。投資運用業とは、「顧客の資産を、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に基づいて、有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資で運用を行う業務」になります。
「有価証券」とは、「株式・債券・手形・小切手など」を指します。「デリバティブ」とは、「通貨(円やドルなど)、債券、株式などの原資産(一般的な金融商品)から派生した商品」のことを指します。これらの商品を取引することを「デリバティブ取引」と言います。ちなみに、取引の種類には、先物取引、オプション取引、スワップ取引、為替予約があります。「投資は悪」みたいなイメージをする人は、ここの部分の印象が強いかもしれません。簡単に言うと、投資をするお客さんの財産を様々な金融商品の動向を分析しながら、投資の運用をする業者が「投資運用業」と言えます。
 投資運用業を行うには、「金融商品取引法の規定により、内閣総理大臣の登録を受けなければ行うことはできません」。具体的な登録要件は、以下のようになります。

組織規制株式会社(取締役会及び監査役、監査等委員会又は指名委員会等を置くものに限る)又は外国の法令に準拠して設立された取締役会設置会社と同種類の法人
財産規制5000万円の純資産及び資本金国内拠点国内拠点設置義務あり人的構成・経営者要件:経営者が、その経歴及び能力等に照らして、投資運用業者としての業務を公正かつ的確に遂行することができる資質を有していること。
・常務役員要件:常務に従事する役員が、金商法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し、実行するに足る知識・経験、及び金融商品取引業の公正かつ的確な遂行に必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識・経験を有すること。

・運用担当者要件:権利者のために資産運用を行う者として、運用を行う資産に関する知識及び経験を有する者が確保されていること。

・コンプライアンス担当者要件:資産運用部門とは独立してコンプライアンス部門(担当者)が設置され、その担当者として十分な知識及び経験を有する者が十分に確保されていること。

・全体的配置:行おうとする業務の適確な遂行に必要な人員が各部門に配置され、内部管理等の責任者が適正に配置される組織体制、人員構成にあること(→実務上、原則複数の運用担当者の設置及び内部監査担当者の独立した設置が必要となる)。

・投資信託計算担当者:投資信託財産の運用を行う場合、投資信託財産に係る計算及びその審査を行う経験者が必要。

兼業規制あり(損失の危険の管理が困難であるために投資者保護に支障を生ずる業務の不存在)

主要株主規制あり(不適格な主要株主の不存在)

出典:トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社「投資運用業とは

 以上の要件を満たし、内閣総理大臣の認可を受けた機関が投資運用業として、投資の運用を行うことができます。
 改正案にある「ミドル・バックオフィス業務に係る業の創設」ですが、「ミドル・バックオフィス業務」とは、ミドルオフィスとバックオフィスで分かれます。会社の不正チェックやあらゆるリスクの報告、コンプライアンス(法令遵守)のための内部管理や営業部門が行った契約のチェック&フォロー、想定外のトラブルが生じた場合の対応、フロントオフィスが立てる収益目標などを実現するための戦略立案・業務内容や企業体制の見直しや改善、情報システムの開発・運用など、ありとあらゆる業務のサポートをするのが「ミドルオフィス」になります。
 「バックオフィス」は、会社の業績というよりは、会社内部の管理が主だった業務になります。例えば、営業部門が売買した商品の記録や決済などを行う事務部門がそれです。皆さんが勤めている会社にも、「経理担当」「事務担当」がいらっしゃるかと思いますが、要はそういった業務を担っている方々を指します。
 これらの業務負担が投資運用会社の課題となっていました。運用を担当する人材も確保したいが、業務が膨大化しすぎて、運用どころではありませんでした。そこで、「投資運用業者からミドル・バックオフィス業務(法令遵守、 計理等)を受託する事業者の任意の登録制度を創設」し、「当該登録業者への委託した者には、投資運用業の登録要件を緩和」することにしました。そうすることで、ミドル・バックオフィス業務は、委託した会社に任せ、フロント部分である投資の運用に注力できるようにさせます。
 更に、投資運用業の登録要件緩和の一環で、「投資運用業者が金銭等の預託を受けない場合は、資本金要件を引下げ」ます。預託とは、「金銭や物品、または情報などを、一時的に第三者に預かってもらう行為」が預託に当たります。例えば、資産運用においては、株式や債券といった有価証券を、証券会社などに預けることを預託と呼んでいます。預託を受けない投資運用業者には、資本金を引き下げることで、登録しやすくします。
 また、分業化が進む欧米と同様に、「投資運用業者が、ファンドの運営機能(企画・立案)に特化し、 様々な運用業者へ運用(投資実行)を委託できるよう、運用 (投資実行)権限の全部委託を可能」としました。
 ファンドとは、「多数の投資家から集められた資金を一つにまとめ基金にして収益を還元する仕組みのこと」を言います。実際に、投資信託協会のHPを見ると、数多くの銘柄が存在しています。

参照:投資信託協会「ファンド一覧」

 ファンドの企画立案や運用実行も、資産運用会社が行っています。しかし、現行法ではファンドの企画立案や運用実行に特化することは「不可
」となっています。改正案ではファンドの企画・運用に特化することを認めます。ミドル・バックオフィス業務は別の業者に任せることで、ファンドの企画・運用に専念することができます。
 欧米の分業化を参考にしながら、投資運用業の新規参入を促す流れを作ろうとする意図が伺えます。

非上場有価証券の流通活性化

次の改正ポイントは以下のようになります。

プロ投資家(特定投資家)を対象(注2)として、非上場有価証券の 仲介業務に特化し、原則として有価証券や金銭の預託を受けな い場合には、第一種金融商品取引業の登録要件等を緩和(資本 金要件の引下げ(5000万円→例えば1000万円)[政令改正事 項]、自己資本規制比率等) (注3)【改正金商法第29条の4の4等】 (注2)換金ニーズに応えるため、一般投資家も「売却」は可能 (注3)外国投資信託等を日本のプロ投資家に仲介する場合も対象と する

 非上場有価証券の電子的な取引の場を提供する場合、取引規 模が限定的なときは、 PTSの認可を要せず、第一種金融商品 取引業の登録により運営可能とする

 現在の認可で求めている追加的な資本金要件(3億円)を課さな いこととするとともに、システム要件(システムの二重化[監督指 針改正事項] )等を緩和(注4)

出典:金融庁「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案

非上場有価証券」とは、「証券取引所に上場していない会社の株式や債券などの有価証券」のことです。2024年4月現在で、証券取引所に上場している会社は、「3,941社」になります。数多くの日本企業が存在する中で、限られた企業のみになります。一方、非上場していない企業は、いわゆるスタートアップ企業や中小企業などが多いです。
 現在、日本では、米国や中国と比べ、遅いながらもスタートアップ企業の数が増えており、非上場株式の保有も進んでいます。しかし、非上場株式を取引する場が限定的で、発行会社やセカンダリーファンドなどで株式を売却する機会がありますが、幅広い流通の機会を提供する必要(新規参入者の促進)があります。そこで、非上場有価証券の仲介業務の参入要件を緩和し、流通を活性化させるのが、今回の改正のポイントです。
 非上場有価証券の仲介業務には、第一種金融商品取引業の登録がある会社でないといけません。第一種金融商品取引業とは、「証券業、金融先物取引業等のこと。流動性の高い有価証券の売買・勧誘、引受け、店頭デリバティブ取引、資産管理などを行う業務」のことです。ちなみに、登録要件は以下のようになっています。

(1)取締役会及び監査役又は委員会設置会社の株式会社であること
(2)純資産及び資本金が5,000万円以上あること
(3)自己資本規制比率120%以上であること
(4)主要株主が一定の欠格者でないこと
(5)第一種金融商品取引業を的確に遂行するに足る人的構成を有すること等

出典:コンプライアンス・パートナーズ株式会社「第一種金融商品取引業

 第一種は、第二種に比べ、厳格な登録要件となっています。その為、金融庁の「登録一覧」では、大手の会社が名を連ねています。今回の改正では、「プロ投資家を対象」とし、「非上場有価証券の 仲介業務に特化」し、「原則として有価証券や金銭の預託を受けな い場合」には、第一種金融商品取引業の登録要件等を緩和することを認めます。また、「非上場有価証券の電子的な取引の場を提供する場合、取引規模が限定的なときは、 PTSの認可を要せず、第一種金融商品 取引業の登録により運営可能」とすることや「現在の認可で求めている追加的な資本金要件(3億円)を課さな いこととするとともに、システム要件(システムの二重化[監督指 針改正事項] )等を緩和」するといったそれまで参入障壁が高く、取引を仲介する業者がいなかったことで乏しかった「非上場有価証券の流通の活性化」を目指しています。
(PTSとは、正式名称はProprietary Trading System(私設取引システム)で、読み方はピーティーエス。証券会社などが運営する株取引システムで、証券取引所を経由しないで株式を売買することができます。2021年7月時点では、SBIグループのジャパンネクスト証券とチャイエックス・ジャパンの2社が運営しています

大量保有報告制度の対象明確化

 大量保有報告制度については、金融商品取引法でこのような記載がされています。

第二章の三 株券等の大量保有の状況に関する開示

(大量保有報告書の提出)

第二十七条の二十三 
株券、新株予約権付社債券その他の政令で定める有価証券(以下この項において「株券関連有価証券」という。)で金融商品取引所に上場されているもの(流通状況がこれに準ずるものとして政令で定める株券関連有価証券を含む。)の発行者である法人が発行者(内閣府令で定める有価証券については、内閣府令で定める者。第二十七条の三十第二項を除き、以下この章及び第二十七条の三十の十一第五項において同じ。)である対象有価証券(当該対象有価証券に係るオプション(当該オプションの行使により当該行使をした者が当該オプションに係る対象有価証券の売買において買主としての地位を取得するものに限る。)を表示する第二条第一項第十九号に掲げる有価証券その他の当該対象有価証券に係る権利を表示するものとして政令で定めるものを含む。以下この章及び第二十七条の三十の十一第五項において「株券等」という。)の保有者で当該株券等に係るその株券等保有割合が百分の五を超えるもの(以下この章において「大量保有者」という。)は、内閣府令で定めるところにより、株券等保有割合に関する事項、取得資金に関する事項、保有の目的その他の内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「大量保有報告書」という。)を大量保有者となつた日から五日(日曜日その他政令で定める休日の日数は、算入しない。第二十七条の二十五第一項及び第二十七条の二十六において同じ。)以内に、内閣総理大臣に提出しなければならない。ただし、第四項に規定する保有株券等の総数に増加がない場合その他の内閣府令で定める場合については、この限りでない。

出典:e-gov法令検索「金融商品取引法」

 大量保有報告制度とは、上場会社等に対する株券等保有割合が5%を超える者 (=大量保有者)に、「大量保有報告書」の提出を義務付け、どのくらい保有しているのか、資金の出所はどこかなど、保有状況の開示を求める制度のことです。
 大量保有報告制度には、「共同保有者」という存在があります。共同保有者とは、「株券等の取得や譲渡、議決権の行使などを共同で行うことを合意している者」を指します。投資家には、「企業と対話 (エンゲージ メント)することが求められる中、協働エンゲージメントの積極的活用により、 質的・量的なリソース不足を補い、対話の実効性を高めることが重要」とされています。 協働エンゲージメントとは、「複数の投資家が協調して個別の投資先企業に対し特定のテーマについて対話を行うこと」を言います。ただ、「大量保有報告制度における「共同保有者」の範囲が法令上不明 確であることが、協働エンゲージメントの支障となっている」のが問題となっています。今回の法律案では、以下のような改正が行われます。

複数の投資家が「経営に重大な影響を与えるような合意」 を行わない(※)限り、「共同保有者」に該当しないことを明確化 【改正金商法第27条の23第5項】
※ 配当方針や資本政策の変更といった、企業支配権に直接関係しない提案を共同して行う場合等を想定

出典:金融庁「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案

「経営に重大な影響を与えるような合意」は、「配当方針や資本政策の変更といった、企業支配権に直接関係しない提案を共同して行う場合等」を想定しています。これにより、環境対策やジェンダーといった数多くの社会問題に対する企業の取り組みについて、建設的な対話を企業と投資家の間で行われることが期待されます。

公開買付制度の対象取引の拡大

 公開買付とは、「対象企業の経営権取得を目的に、株式の買付価格や期間、株式数などを公告し、取引所外で多くの株主から大量に買付ける手法」を指します。株式公開買付ともいいます。「英語表記の「Take Over Bid」を略して「TOB」とも呼ばれます。買収対象企業が買い付けに同意していないのに一方的に実施する敵対的TOBと、買収対象企業の経営陣が賛同している友好的TOBがあります。金融商品取引法で、市場の内外に関係なく3分の1超の株式を取得する場合はすべてTOBが義務付けられています。近年は自社株買いに利用する企業が増えています」。
 また、公開買付制度というものがあり、「一定割合を超える上場株式等の買付けに対し、 事前の買付目的等の開示を求め、全株主に平 等な売却機会を与える」制度のことを言います。
 公開買付制度において、近年の課題として「市場内取引等を通じた非友好的買収事例の増加、M&Aの多様化といった環境変化を踏まえ、取引の 透明性・公正性の向上を図る必要」が指摘されています。

 今回の法律案では、以下のような改正がなされます。

・市場外取引だけでなく、市場内取引(立会内)も適用対象と する
・公開買付を要する所有割合を議決権の3分の1から30%に 引下げ

出典:金融庁「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案

 「3分の1ルール」とは「買付け後の株式等所有割合が3分の1を超える場合には、TOBによる買付けが義務付けられる」ことです。今までは市場外取引、市場内(立合外)に適用していましたが、市場内取引(立合内)でも適用されることになります。規制適用範囲の拡大になります。また、公開買付を要数所有割合を引き下げることで、より取引の透明性を図ろうという意図が伺えます。ただ、規制範囲を拡大したことで、「積極的なM&Aが起きにくくなるのでは?」という懸念があります。


参照:金融庁「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律案の概要


筆者の意見

 今回の法律案に関しては、私自身は「賛成」です。これからは、資産運用をやっている人とやっていない人で将来的な資産に大きな差が生じます。我々のような個人投資家は、日々、株式市場で闘い続けているプロの投資家にはまず勝てません。だからこそ、サポートする立場の投資運用業の新規参入が望まれます。また、取引の活性化を促すために、それを阻害する規制は改革していくべきだと考えます。それを踏まえて、数点質問があります。

①非上場有価証券の仲介業者の登録要件緩和の対象に、「第二種金融取引業」も追加することは考えていないのか。

 金融商品取引業には、第一種と第二種があります。第一種への登録要件緩和は大賛成なのですが、更に「第二種金融商品取引業」の緩和も進めていくのはどうでしょうか。そうすることで、取引を仲介する事業者の数が増え、非上場株式の取引が活発になると考えられます。証券会社だけでなく、個人も参画することで、幅広い取引が行えると考えます。

②投資運用業の新規参入を促すならば、登録免許税の減税をすべきではないか。

 今回の改正では、「投資運用業の新規参入」を促す施策がありますが、今後も投資運用業の新規参入を促進するには、投資運用業や金融商品取引業などへの登録免許税の減税が効果的ではないかと考えます。登録免許税とは、「不動産、船舶、航空機、会社、人の資格などについての登記や登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定および技能証明について課税」されるものです。例えば、投資助言・代理業の登録免許税は「15万円」です。ここを減税することで、個人でやろうとしている人たちの負担が軽くなり、参入しやすくなるのではないかと思います。手続きの簡素化(ヒアリングなどをオンライン化にする)も含めて、検討してもらいたいです。

③公開買付の規制対象拡大で、積極的なM&Aが減ってしまうのではないか。

 公開買付制度の規制対象を市場内取引(立合内)も含めたことで、非友好的な買収に歯止めがかかることになりそうですが、その分、多様化するM&Aに陰りが見えてしまうことも懸念されます。その辺りの認識について、政府側の説明が欲しいところです。

最後に

 今回の法律案を調査し、「岸田政権は、金融政策に関しては、積極的だな」という印象を受けました。最初は、「アベノミクスからの転換」「金融資産(金融所得)課税推進」というイメージが強く、「岸田首相は金融政策に対する理解がないのでは?」と思いました。ただ、去年の日銀人事や新NISAの恒久化や拡充など、岸田政権は、金融政策を意外と軽視していないように思えます。むしろ、積極的すら感じます。しかし、懸念点はあります。それは、「増税」です。金融政策での課税といえば、「金融所得課税」と「金融資産課税」があげられます。岸田首相は、2021年の自民党総裁選で、「金融所得課税の見直しを検討」していました。金融関係の課税に関しては、与野党問わず、未だに「増税せよ、課税せよ」との声が後を絶ちません。金融資産や金融所得への課税は、「中間層の資産強奪」です。せっかく、新NISAで所得の拡大を推進しているのに、所得を破壊する愚策に打って出るのはいかがなものでしょうか。
 今は、岸田政権下で、そのような課税の議論はありませんが、このような増税の議論はすべきではありません。なぜなら、「政治家が金融所得や金融資産に対する課税を議論する」というのは、それだけ、株価に影響を与えます。株価の下落によって、国民の投資行動にも冷や水が浴びせます。新NISAの恒久化を導入したならば、その整合性を取るべきです。そんなに増税の議論したいなら、国会議員という役職を辞めて、一般人になってから、大いに議論してください。今は、新NISAのように、非課税にして、色んな人が投資に参加をしやすい環境にしていくべきでしょう。「資産運用立国」を目指すなら、無駄な規制をなくし、減税を推し進めるべきです。


 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?