椎名林檎とか県庁とか星とか

初めてフェスへ行ってきました。8月6日、福井は最高気温37.9℃を記録。その熱気は気でも狂っていなければ到底耐え難いものでした。しかし参加者たちはステージを前に、汗まみれの肩を狭く寄せ合い、一丸となって飛び跳ね、全身に血を駆け巡らせていました。その無意味な情熱を目の当たりにして、夏だ、と強く思い、私も気狂いになることとしました。

penthouseを聴いた後、時間が空いたのでレコード屋のおじさんに会いに行きました。会場のすぐ近くで古着やレコードなどの出店が多くあったのです。店に来ていた男の子と話していたら、フェスの一環として福井県庁の地下1Fで行われている、テクノ系DJのライブへ一緒に行くことになりました。初めて県庁に入り、地下へ続く階段を降りると、会場は完全にクラブと化していて、それが非常に面白く、心の中で県庁、県庁、と唱えるばかりでした。

時間になったので外へ出て、日光に痛く刺されながらくるりを聴きました。「この街はとうに終わりが見えるけど 俺は君の味方だ」のところで、はっきりと死にたいと思いました。これ以上なにもいらないと。

indigo la Endも聴きました。川谷絵音をかっこいいと思ったことは今まで一度も無かったのですが、歌を聴いたら、なるほど..。と思ってしまいました。会場の血気が絶頂に達した瞬間に放たれた、締めの「ありがとう」が素っ気なかったのです。女はいつだって気狂いです。一抹の心細さを与えてくる男によわい。

そして大トリの椎名林檎です。会場にいた全員が彼女に釘付けでした。暑いでしょうに、和装で来てくださった。やはり去り際が最も美しく、「ねえ利き男、冗談よ左様なら」と歌いながら、すーっと舞台の袖に消えて行ってしまいました。きっと私が彼女と会うことはもう二度とありません。

興奮冷めやらぬまま、友達の車に乗せてもらってドライブをしました。朝昼まともに固形物を食べていなかった腹に家系ラーメンを入れたら、生と死を一度に感じることが出来ました。思えば今日一日そんなことばかりです。ラーメン屋を出て海に向かいました。道中、友達の恋の話を聞いて、いつも通り私がその相手の男のことをぶーぶー言いました。私が必ずぶーぶー言うと分かっているのに彼女は懲りずに恋の話を聞かせてくれます。ありがとう。

海につくと、星がよく見えました。彼女と私が同時に北の空を見上げたタイミングで、それを見計らったように星が流れました。あまりに幸せで願い事のひとつも思いつきませんでした。

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