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【clusterゲームデザイン論Vol.0】没入感を再解釈する

clusterゲームデザイン論とは

本記事「clusterゲームデザイン論」では、clusterで作るゲームワールド・イベントの体験価値を高める手法を探っていきます。ClusterCreatorKitの深い所には触れず、ゲーム制作の考え方を培っていきます。ClusterGAMEJAMのチーム制作でUnity担当じゃない人でも、皆でどんなゲームを作るか考える時に役に立つと思います。

今回は第0回ということで「没入感」について考えてみましょう。

没入感とは

没入感はVRで遊ぶ良さとして知られ、VRゲームの批評に必ず書いてあるような言葉です。

しかし、「没入感」という表現はプレイヤーから見ればゲーム体験を想像しやすいものですが、クリエイターから見れば「どうすれば没入感が高まるのか」というのが想像しにくいです。
ですから、我々はこの「没入感」という言葉を再解釈する必要があります。

没入感を再解釈せよ

没入感の再解釈は、そのクリエイターが作るゲームジャンルによって多少違う所はあるでしょうが、ここでは私の解釈を紹介します。

没入感は身体性主体性リアリティに分けられます。細かい話はVol.1以降で書きますが、それぞれ簡単に説明していきます。

身体性

身体性はアバターを自分の肉体として行動する事としています。スマホやパソコンとは違いVRではアバターを自分の身体と同期させてワールドに入るので、ただカーソルを合わせてクリックする操作よりも、「斧を振り回す」「引き金を引く」等の手を動かす・分かりやすい操作の方が強固な身体性を生むでしょう。

「タッグクライマー」より
プレイヤーの手つなぎを可能にするパワーアーム

また、背後からナイフを刺される・巨大怪獣が原寸大で現れるといった、自分の身体の存在により映える演出はまた別種の受動的な身体性と言えます。

「星まつり、廻らない砂時計」より
背後からナイフを刺されるシーン

主体性

主体性は自分がその世界の主人公として存在し、その世界に干渉する事です。空間を眺めるだけでは360度動画の体験とほぼ変わらりません。「鍵を開ける」「敵を倒す」のような行為ができる事が主体性を高めます。

また、主体性は「自分の発想に基づく行動か、NPCの台詞などの誘導に基づく行動か」「世界を変えた・物語を勧めた実感を与えられるか」の2軸で評価できます。それと、「プレイヤーが自分の目的を理解して行動しているか」も大事です。扉を開けるレバーは扉から離れた位置にあるより、扉の傍にあるべきでしょう。

特に「隠された重要アイテムを見つける」「特殊な攻略法を見つける」などプレイヤーの発見を伴った行動は、自分がゲームの言いなりではなく主人公なのだという実感を強くするでしょう。

「タッグクライマー」より
ハシゴや水晶の上を飛び回る以外にも突破方法が…?

リアリティ

リアリティは世界に矛盾や違和感がなく動的である事です。
枝葉が揺れていればその世界が生きていると感じられますし、ビジュアルやアニメーションのクオリティで圧倒できればプレイヤーもそれを1つの世界として捉えてくれるでしょう。

「地下壕の讃美歌」より
???

またgrabbableItemに関しては軽い物の方がコントローラーを持つプレイヤーには自然に感じられる、ゲームの操作説明に関しては説明事項を絞りながらNPCに自然に話させるor不自然になる所は事前説明で済ませる事が重要になるなど、設計の段階でできる事も多くあります。

(特にVR-TRPGやイマーシブシアター的な取り組みではリアリティの問題が重要になってきます。進行役の言葉での描写がワールドのビジュアルでの描写を上回るとプレイヤーがそれをネタにしようとする地獄が発生する時がありますし、ギャング組織が拠点にしている廃倉庫に何故か金庫のパスワードを答えとするクロスワードパズルがあると世界の強度が保てなくなってNPCを演じにくくなります。)

終わりに

「没入感」とは何か、分かってきたでしょうか。ゲーム制作の相談などで「没入感」という言葉を別の適した言葉に置き換えて話せるようになると良いですね。しかし、没入感がVRゲーム体験の全てでは無いのでそこは注意が必要です。

今回取り上げた要素のうちいくつかは次回以降で掘り下げていきますのでそちらもお楽しみに。(Vol.4位まで大体書き終わっているものの記事を公開するモチベが無いのでいつ出るかは未定)

まぁ実際にこういう思想で組まれたゲームを体験してみたかったら新作VR-TRPG「地下壕の讃美歌」を遊んでみて下さい。そんなこんなで。お相手は、逆凪でした!


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