【ショートショート】ストロング缶の魔人
ストロング缶を買ったところで、持ち金が尽きた。現実逃避の道具を買うたびに現実が苦しくなっていくマッチポンプ。わかってはいるけれど、飲まないことには夜を越せないのだ。
現実逃避のついでにと思いつき、缶の脇を擦ってみたのが30分ほど前に俺がとった行動のすべてだった。
「で、早く願い事を言ってくれない?」
今は、目の前に突然現れた魔人が、3分に2回のペースでかれこれ20回ほど同じ質問を繰り返している。
"魔人"とは本人がそう言っているだけで、見た目は20歳ぐらいの優男だ。昔、絵