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屍のように裸体を晒し頑張る事なく何もしない人生を送っていたらこうなった【ヘドゥ】

私は片付けができない。

元々片づけるのが苦手。
それに加えて、何か一つでも嫌なことがあると、全く片付けをしなくなる。
バイト遅刻、誰かに怒られる、友達と遊んだのになんか楽しくなかった……。
そういったちょっとしたことで、もう全部どうでも良くなって、部屋にはゴミが溜まり、座る場所すら無い汚部屋の完成だ。その繰り返しでゴミだらけになった部屋には、誰も入れたことがなかった。
ゴミだらけになった部屋は恥ずかしいのはもちろん、何よりも私自身を象徴しているように思えて、「これを見て引かれることは私が拒絶されているのと同じだ」と思っていた。

2021年、5月。
バンドで集まった日。
終電を逃した私は、庄田に車で送ってもらうことになった。
寒河江も含め3人の車内。私は気が気じゃなかった。
「『ちょっと部屋見せて』ってなったらどうしよう」
実際に恐れていたことは起こった。
嘘の自宅の場所を伝えたが、バレた。
汚いことを思い切って伝えてみたが、「それでもいいから」となった。ああ、こいつらは私が部屋を見せるまで帰らねえんだと思った。終電を逃した自分が憎くて仕方なかった。
寒河江と庄田は私の部屋を見ることになった。
玄関の扉を開けると流れ出してくるゴミ。照明器具が二年前に壊れて真っ暗な上、胸辺りまで積まれたゴミで部屋には入れなかったが、玄関から見える景色、それだけで引くには十分だった。
少しの沈黙の後、二人のどちらかは覚えていないが「片付けよう」と言った。
私が「もう終わった」と思っている間に、二人は玄関のゴミをゴミ袋に入れて帰って行った。
なんかよく分からないうちに、私の部屋の片付けを寒河江と庄田が手伝ってくれることになった。
「あの状態の部屋にいるのは良くない」そう言っていた。「知られたくないなら動画にもしないし、誰にも言わない」
なんのメリットもないのに、あんなに汚い部屋の片付けをなんで手伝ってくれるんだろうと思った。

それから寒河江と庄田は何回も何回も家に来て、私の部屋の片付けをしてくれた。庄田は虫が苦手なのに、ゴキブリだらけの部屋で、虫の巣となった冷蔵庫を掃除してくれた。寒河江は、500本くらいたまった飲みかけのペットボトルを洗って、ゴミに出せる状態にしてくれた。(飲みかけで放置したペットボトルは爆発する。現に寒河江は爆発したカルピスを浴びることになった。)
最終日には長谷川も来て、残りのゴミの処理や照明器具の買い出しを手伝ってくれた。
最終的にゴミは90リットルのゴミ袋に60袋くらいにまとまった。引き取り業者の手配もお金もみんなが助けてくれた。
寒河江、庄田、長谷川のおかげで、二年ぶりに部屋に灯りが灯った。三年ぶりに足を伸ばして寝た。
汚い部屋を見て、ドン引かれて距離ができるとばかり思っていたら、片付けてもらえて、良い暮らしができるようになった。
「ありがてえ。一生この三人には足を向けて寝られないな。」と思った。
「バンド頑張ろう」と思った。

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