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今週の台所・あさりのお味噌汁

自分と料理の今に至るまでを語るとき、3人の方々の発信や著作から受けた影響がとても大きい。その人たちの生活を垣間見させてもらったり、知識・知恵、考え方から力をもらっている。

「まじめに料理をしたい」と強く思うきっかけになったのは、木村文乃さんがインスタグラムにアップしている『ふみ飯』を見たときだ。ご存じの方も多いかもしれない。ふみ飯は、木村さんが料理したものをインスタグラムに投稿したもので、料理だけでなく器も美しく、とても素敵だ。ドラマの演技を見て圧倒されていたときにふみ飯の存在を知り、あんなにすごい演技をしてこんなに素敵な料理も作るなんてぇぇ…と驚いた。同時に、「うわあすごい。私もこんなふうに料理ができる人になりたい」と強く思ったのだった。

そんなとき、冨田ただすけさんが運営されているウェブサイト『白ごはん.com』は救世主だった。おもてなし料理から和食の基本まで、「一番丁寧な和食レシピサイト」というその言葉通り、とても丁寧に一つ一つのレシピが紹介されている。だし汁のとり方、ゆでた野菜を水につけるかつけないか、などなどなど…ほんとうにたくさんの料理のいろはを教えてもらった。スマホ片手にレシピを逐一確認して、ときに納得し、料理をまじめにはじめた去年はもちろん、今もよくよくお世話になっているサイトだ。


数週間前、祖母の家で食べたあさりのお味噌汁がとてもおいしかった。あさりは塩抜きがなあ…なんて思っていたけど、そんな気持ちも吹き飛ばすおいしさで、数週間経った今週、作ってみた。

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昆布とあさりのだしのきいた汁をすすっているとき、おいしいなあ、ああ、うまいなあと顔がほころぶ。と同時に、自分で作ったおだしでほっとするなんて、ふみ飯をみたあの日から、私は遠くまで来たんだなあと思った。

3人目が出てこない…。

3人目は、土井善晴さんだ。土井善晴さんの、『一汁一菜でよいという提案』という本のおかげで今があると思っている。料理を作るのは好きだけど、常に作り続けるのはむずかしいなあ、と思っているときにこの本を見つけた。本の基本の主旨を一言でまとめると、「おかずをたくさん作らなくてもいい、ごはんと具だくさんの味噌汁があれば充分」というものだ。

最近の私の食生活は、〈ごはん+味噌汁+漬物+魚や肉、副菜があったりなかったり〉が基本の型になっている。それまでも味噌汁は好きでよく作っていたけれど、この本がなかったら、土井さんの言葉の説得力がなかったら、たぶん味噌汁を食のまんなかに今ほど据えることはなかった気がする。

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その人が好きなもの、長けたものを発信したり伝える力は強い。自分が今日に至るまでのことを振り返ると、そう思う。私はその人たちの生み出したものや発信に影響を受け、恩恵を受けて、今ここにいる。

今日テレビをつけると、動物好きのココリコの田中さんが、魚について熱心に、楽しそうに語っていた。その姿は、魚にそこまで興味がなくてもそれだけで見ていて楽しかった。

毎週書くのは結構大変で、時間を費やせば費やすほど、自分のああうまいなあ、だったり、うわ、なにこれ! というはじめの感動の源泉みたいなものがわからなくなってくる。「あさりの汁うまあ」が今週のどまんなかで、そのときに思い出すのは3人の方々の発信やHP、著書との出会いだった。今週は、うわ、なにこれ! の感動はない。そこにあるのは感慨深さのようなものだった。自分のどまんなかを忘れず、ときにココリコの田中さんのように、自分の熱をまっすぐに書いていきたい、と思った日曜日なのでした。

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