パンのお代わりで考えるレストランマナーとサービス

フルコースを提供するレストランのサービスマンとして常日頃からどうにかしたいなぁと考えている事の一つに、レストランにおける

パンのお代わり問題

があります。

「レストランで提供されるパンはお代わりが出来る(基本的に無料)」というのは大体皆さんが共通してお持ちの知識だと思います。

料理人ではないので勝手なことは言えませんが、お代わりはご自由に(ただし節度を持って)とは思うのですが

供する側から見た「食事スキル」的な物の中で割とパンのお代わりスキル(笑)は軽視されているというかそもそも認知されていないのかなぁと思います。

なんていうと大げさなんですが、要は大体皆さん自分の胃のキャパがわからずにパンを食べてしまっているという事です。

世の人気店で供されるパンはお店で焼いているものにしろパン屋さんが焼いたものにしろ、すごく美味しいんです。

うちのシェフが焼いた長時間発酵フォカッチャ(普通フォカッチャはこねてから2時間くらいで焼きますがうちは一晩寝かせます)なんて絶品ですし、同じく長時間発酵チーズ入りチャバッタなんてもう辛抱たまらんレベルです。

ケチることはしたくないので割とレストランのパンとしてはやや大きめにカットされ、オープン直前に焼き上げられたパンはとても香ばしく食欲をそそり、いくらでも食べられそうです。

が、これから出てくるフルコース、実際どれくらいの量でしょうか?

うちのコースの場合は

・アミューズ
・前菜
・魚料理
・パスタ①
・パスタ②
・肉料理(メイン)
・ドルチェ
・コーヒーと小菓子

という構成です。

アミューズと小菓子は一口サイズなので無視しても良いとして、例えばパスタは一皿辺り大体2~30gくらいの量で用意します。

一般的にパスタのみで完結する場合の一人前の量は80~100gくらいのお店が多いですし、大盛りにする方もいるでしょうし自宅ではもっと食べる…という方もいるでしょう。

しかし、それが二皿に加え同じくらいの量の前菜と魚料理がその前に来ます。

中盤からのパスタ攻勢で単純計算80~既に120gほどの量になると考えられます。

メインの肉料理を前にして、です。

なかなか多いですね?

そしてうちの場合はメインは大体100gほど。
(お店によっては50gくらいの場合もあるでしょうが皿数や味の濃さにもよります)

そして、付け合わせもそれなりの量です。
トータル150gくらいになるでしょうか?

単純に重さだけで見ればパスタランチの大盛りクラスです。

1時間~2時間くらいをかけてゆっくり食べるのでいつもよりも量を食べられる方もいるでしょうが、それは人それぞれです。
レストラン慣れしていない方は緊張で胃が小さくなる事もあるでしょう。
僕の場合はワインも楽しむのでそれによりいつもより大分小食になります。

一皿ごとが少量に見えてもグルメサイトなどで見られる宣伝写真のように全ての皿を並べたところを想像する、もしくは上記のように実際のグラムで考えてみると思ったよりも多くはありませんか?

そこに更に、パンです。

この事に気づいてからは僕はレストランでの食事中ほとんどパンに手をつけなくなりました。
お酒も少し控えるように…そうすることで最後のクライマックスのメイン料理をしっかりと味わって食べられるようになりました。

さてタイトルは「レストランマナー」ですが、何がマナーに繋がるかと言うと「残さず食べる」という事です。

お店側から強く要求する事ではないのですが、シェフが心を込めて作った料理が残ってくればシェフはもちろん皿を運びサービスする僕も正直良い気はしません。

なので小柄だったりご高齢だったり、パッと見で小食に見える方にはコースのスタート前に「僕がおなか一杯になるくらいの量なのでよろしければ量の調整を致しましょうか?」とご提案したり

若い方に比較的多いのですが、序盤にあまりの美味しさに一気にパンを平らげてしまったりする空気を感じたときには「焼きたてで本当に美味しいんですが、後半になると胃にどしっと来ます。よろしければ箸休めにどうぞ」と付け加えます。

(そうそう、レストランにおけるパンってお腹を満たすためのものでなく箸休めなんですよね実は。)

大きなお世話かもしれませんが、僕もサービスのプロとして毎日たくさんのお客様のサービスを繰り替えすことで顔を見ればそのお客様の食べ進め方や胃のキャパは何となくわかるようになりました。

もちろん100%ではありませんが、何かを感じた場合には僭越ながら上記のようなご提案やアドバイスをさせて頂いております。

「大丈夫です結構食べるんで!笑」という方ほど残される傾向にあります…笑

こういった僕とのやり取りを経て残すという結果も一つの人生経験なのでその後の皆様のレストランライフに役立てば良いなと思いますが。

お節介かもしれませんが、決して安くはないお食事のクライマックスのその日一番高級な食材を食べきれないというのはお客様としても残念な気持ちになるでしょうし、これを頭の片隅に置いて頂ければ損をしたような気分になるような事もありません。

すみません、つい何について書いているか忘れて展開する癖があるのですが、前述の通り一つのマナーとして「残さず食べる」というのはレストランの場において大切だと日ごろ考えます。

何故ならレストランというのはただ美味しいものを食べる場ではなく

「大人がスマートに食事をする社交場」という側面も大いに持ち合わせているからです。

長くなるので今回はその一端にちょいと触れるくらいにしておきますが、今回の内容はレストランをスマートに使いこなす術に繋がりますし、何より楽しみにしていた美味しい食事をきっちり楽しむということに繋がります。

ご一考頂ければ幸いです。

ちょとラフに書きますが

・パンは箸休め!
・食べ過ぎると後半しんどい!
・あとがっつくのはあまり上品な行為ではない!

というのを押さえていただくと大分レストランスキルは向上するかと思います。
重ね重ねお節介ですみません…

で、最後にタイトルのもう一つ

「サービス」についてですが

ここまでだらだらと書き連ねた理由により、僕は積極的にパンのお代わりを勧めません。

たまに口コミサイトで見かけるのですが

「パンのお代わりを勧めてくれなかった!サービス減点!」

というような内容です。

気持ちはよくわかるのですが…

僕はざっくりと「お客様に最後まで心地よくお食事を楽しんでいただく」お手伝いをするのがサービスマンの仕事と思っておりますので、その妨げとなる事は極力しません。

食べられそうな方にはお勧めします。
それも最後のメイン料理をお見せしたタイミングです。

「もし余裕があればパンのお代わりは如何ですか?」と。

心当たりがある方がいらっしゃれば、そういう考えで動くサービスもあるという事をわかって頂ければ幸いです。

まぁでも普通にパン食べたければ普通に頼んでください笑
最初に書いたように、お代わりは自由です。

以上です!

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