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soular
容花 第二話
6/26
休日。昨日から雨が降っている。
昨日の森本さんとの会話が何も考えていなくても勝手に反芻されてしまう。彼の声音、視線、その全てに彼の痛みを重ねてしまう。それでいて何も分からない。分からないからこそ、どうしようもなく心が痛い。
私は幸せでいいのだろうか。
6/27
土曜日に仕事をしていたから、その代わりに休む。久しぶりに晴れたから洗濯をして、部屋の掃除をする。いつかディズニーランドに行った時のお土産のキーホルダーが出てくる。それを引き出しの奥にそっとしまう。
アサガオの家の跡地に行こう。
彼の心は深い森の中にいる。だとしたら彼の魂の在り処でしか彼は救われない。
6/28
蒸し暑い1日だった。
アサガオの家についての文献や資料、取材実績を整理することに1日を費やした。
私はこれをこれから言葉にしなければいけない。
翔太から「あまり頑張りすぎないでね」と連絡がある。
ひとこと「ありがと」とだけ返して、それっきりだった。
6/29
再び森本さんに会う。森本さんはアサガオの家について話してくれた。
全てを自分に置き換えて考えるたびに、心臓が締め付けられる。自分にないはずの傷跡が痛み、出すような感覚がある。
明後日アサガオの家の跡地に行く件についても承諾してくれた。
6/30
7/1
今夜、アサガオの家に向かう。
明日の朝が、ちょうどあの事件から9年になる。
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