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コーヒーがつなぐつながり

歌声喫茶が流行った時代がありました。
ボクの両親が若い頃に何度も行ったことがあるんだよ…、と、そういう時代の流行りの業態。
見知らぬ人たちが集まって、同じ歌を歌ってたのしむ。

歌を歌うのが目的ならばカラオケボックスやカラオケスナックのような場所に行けば良い。
けれどみんなで同じ歌を歌うことで、不思議な連帯感を味わうことができる場所。
歌うということをきっかけ、手段として「一体感を味わう」ことができる社交の場とでもいえばいいでしょうか…。
数は減ったけれど未だに残る、息の長いブームです。

最近、オキニイリの「ヴァーヴコーヒーロースターズ」というコーヒー専門店にくるたびここは「新しい時代の歌声喫茶」じゃないかと思う。

スターバックスのような店です。
エスプレッソマシンとハンドドリップのコーヒーを売り物にした店。
セルフサービス。
カウンターの中のキッチンでは、おいしいコーヒーでお客様をもてなすことが好きでしょうがない人がニコニコ、働いている。

有名ではない。
スターバックスがメジャーデビューしちゃった歌手だとすれば、ここはいまだメジャーではないインディーズ。
デビューしたばかりのアーティストをみんなが応援しているって感じがある。
ここに限らず最近、増えてる。
「インディーズ系コーヒー専門店」とでも言えばいいでしょうか。
決して有名じゃない。
店も一軒だけ。
支店があったとしても数店規模で、ムードは自由です。
そういう店には不思議なほどに人が集まる。
自由なムードが好きな人たち。
そしてそこには有名じゃない一風変わった店を選んでしまったもの同士の連帯感が溢れてる。
ゆるやかでカジュアルな社交場っていう感じ。

人は誰かとつながりたいと思う生き物。
つながりの形は時代、時代で変わる。
かつては会社におけるつながりのように、上下関係と規律のもとにできあがる頑丈なつながりが好まれた。
けれど今、好まれるつながりはSNSのようなつながり。
誰が真ん中にいるわけでなく、互いがゆるやかにつながるつながり。

セルフサービスということもいいのでしょう。
テーブルサービスの店でお客様は受け身になりがち。
「見ているだけ」のフォロアーが、ある日突然牙を剥きご機嫌なムードを台無しにしてしまうことがSNSの世界でよくある。
みんなが自由に投稿し合うということがつまり社交であって、サービスに参加するこで「自分の店」という感覚をもってくれる。

こういう自由なムードをもったレストランができないものか。
思うも、なかなかコーヒー以上のきっかけが思い浮かばぬところがなやましい。

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