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ハンバーグはみんなで分けることができるから…、と母が言う。

ひさしぶりに若松町の「かどや」に来る。

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お店の本当に近くに両親がかつて住んでた。東京の終の棲家にと買ったマンションが裏手にあって、事業を整理したのを機に両親が生まれ故郷の讃岐に居を移した今もボクの本籍はそこにある。
特別なことがないかぎり毎週日曜は実家に戻ってた。
親子団らんが目的なのだけど、父とは必ず仕事の話になってかなりの確率で喧嘩がはじまる。大抵は小さな口喧嘩でおさまるのだけど、ときに取っ組み合いの喧嘩になったりすることもある。

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そんなときに決まって母が、今日は晩ご飯を作りたくないから外食しましょう…、とボクらを誘って出来かけたのがこの店だった。
親子喧嘩はしているどちらもが止めるきっかけを探しながらする喧嘩です。家族みんなのオキニイリだったっぷり「かどや」はよいきっかけになってくれていたんだなぁ…、って思う。

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土曜休みで日曜営業。小さな店でカウンターに小上がり席だけ。どこにも隠れる場所などなくて、ついさっきまで喧嘩してても仲良くふるまう他はなく、たちまち親子団欒がそこではじまる。

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今日は昼来る。ここ数年、日曜の昼に来るたび必ずいる常連さんたち。どうも近所の商店街のおじさんたちで、日曜は休みの人たちなんでしょう。昼から酒盛り。世間話に花を咲かせてたのしげで、いいお店って人を仲良くさせる力があるんだなぁ…、ってしみじみ思う。

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父はいつもエビフライだった。まるまると太ったエビに分厚く細かなパン粉をまとわせザクッと揚げたエビフライ。ボクはポークピカタにエビピラフかドライカレー。母はいつもハンバーグ。ハンバーグなんてそんなに好きじゃなかったはずで、なぜ?って一度聞いたことがある。

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そしたら、ハンバーグはみんながつまみやすいでしょう…、って。
ありがたきかな、母の愛!
それで今日もハンバーグ。
ドライカレーをお供にとって味噌汁、漬物でひと揃え。
ハンバーグにはポッテリとしたデミグラスソース。目玉焼きがのっかっていつも親父が目玉焼きをとってたよなぁ。なつかしい。

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そう言えばここのドライカレーにはマッシュルームとレーズンが入ってた。
マッシュルームはまだ避けられるからいいんだけれど、レーズンは小さい上に周りのご飯までレーズン臭くなるから嫌いって言っていた。
今日のドライカレーにはレーズンが見当たらずタナカくんもよろこんだかなぁってちょっと思ってクスッと笑う。

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丁寧にフライパンでジリジリ熱が入ったご飯。芯までカレーの味が入ってパラッと散らかる。
それにしても目玉焼きの状態のすばらしきこと。白身の縁はこんがり揚がって仕上がって、黄身はとろりとほどよく半熟。ドライカレーの上にのっけてスプーンで崩しながらドライカレーと一緒に食べる。
千切りキャベツは切りたてでみずみずしくて、シャキシャキ食感軽い仕上がり。ケチャップあえのスパゲティーもドライカレーのよきお供。

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じゃがいもや豚バラ肉の端材がたっぷり入った熱い味噌汁も、自家製のぬか漬けもいつもどおりにおいしくてウットリ味わう。

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そしたらドライカレーの底の方からレーズンが顔をのぞかす。やっぱりレーズン入ってた(笑)!


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