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サービスのよい食べ放題と禁じ手のカレー

鍋ぞうというお店があります。
しゃぶしゃぶ、すき焼きの専門店。
野菜バーを店内におき、好きな野菜をお客様が自由にとって鍋野菜にして鍋をたのしむというスタイル。ご飯や麺類、調味料や薬味も野菜の周りに多彩におかれ、自由に使って自分の好みに仕上げられるというのが特徴。
ドリンクバーやアイスクリームも充実してる。
「ちょっとおしゃれでちょっと贅沢な専門店」を展開している会社のお店で、どの業態もオーダーバイキングやサラダバーを上手にとりこんでいる。

鍋ぞうは首都圏に全部で20店。
最近ではインバウンドの人たちに人気があって、いつもにぎわう。
中でも新宿東口店はトリップアドバイザーで全国2位の顧客満足度のお店に選ばれた店で、さすがに予約も取りづらい。
トリップアドバイザーで高い評価を受けるということは「お客様とのつきあいを丁寧にする」ということの積み重ね。しかもインバウンドのお客様が中心ということになると、「わかりやすく」「伝わりやすく」を心がけてサービスすることが必要となる。
ボクの横のテーブルにも香港から来た女性がふたり。いろんな野菜が用意されててたのしいわねぇ…、と野菜をしゃぶしゃぶして食べている。

肉は注文して持ってきてもらう。
野菜や薬味、ご飯や麺類はバフェスタイルで自由にとって食べ放題。薬味豊富で、それぞれの説明をバフェの前にたったお店の人がずっとしている。
こういうところが評価されての全国2位なのかもしれないなぁ…、って感心します。
ホールでサービスをしている人は最小限です。
必要な肉をたのむともってくる。
鍋の中の様子をみながら、スープが減ったら持ってくる。
胡麻だれ、ポン酢とどちらも徳利に入って置かれる。その傾け方を観察しているのでしょうネ…、そろそろお代わりほしいなぁってところですかさず新しい容器にやってくる。
しかもとびきりの笑顔付きです。
食事を終えてアンケートにご協力下さいと手渡されたのがiPad。設問は完結でわかりやすく、中でも「笑顔がありましたか?」という項目がある。
なるほど「笑顔で伝える気持ち」を大切にしているんだなぁ…、と思う。

〆に割り下で牛バラ肉を炊いて、ずっと〆のためにと煮込んでいたネギにしらたき、豆腐と一緒に御飯に乗せる。
溶いた玉子を鍋に落として卵とじにしてご飯にのせて牛丼にする。
他にも中華麺があったりうどんがあったり、しゃぶしゃぶのスープで作るお茶漬け用のセットがあったりと〆の提案が多彩にあるのもたのしいところ。
ちなみに昔はカレーがあった。
このカレーがおいしくて、例えばすき焼きの割り下で炊いた牛肉をたっぷり入れて牛肉カレーなんかを作るのがたのしかった。
5年くらい前でしょうか…、カレーが突然なくなった。

もったいないなぁ…、と当初は思った。
だって、カレーがおいしいということはご飯を沢山食べてくれるということで肉のお代わりが減るはずで、なんで損するようなことをするんだろうと思ったワケです。
けれど考えてみれば、カレーがおいしいということは、肉がお代わりできないということであり、なにより店にカレーの香りが充満する。
肉を沢山食べに来たのに、印象に残ったのはカレーがおいしかったということだとするならばお店の本来の価値とは違った価値を売ってしまったことになる。

カレーはおいしくて当然なんです。
ホテルのバイキングでカレーを見つけると、あぁ、ココに逃げ場を作ったなぁ…、と思う。
料理で差別化しようとするとわかりにくい料理や、好き嫌いがはっきりする料理が増える。
食べづらかったり、緊張を強いられる料理も増えてそんなときにカレーがあるとお客様はホッとする。
大量に仕込み、肉や野菜の端材をたっぷり使って作るカレーですから、それはおいしいに違いない。誰も損せぬ料理です。
売れて当然でもあって、だから売り上げが低迷したときにカレーを導入する店もある。
いきなりステーキが一部店舗でカレーを売っているけれど、これは禁じ手。おいしくすればするほど、ステーキ屋であるより肉がおいしいカレー屋さんになってしまう危険があるのになぁ…、って思う。なやましい。

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