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カツサンドならぬ「とんサンドイッチ」にとん汁つけて…。

ひさしぶりの「王ろじ」。

創業大正10年。とんかつという料理を作ったお店のひとつと言われる名店。
すべてのはじまりは、明治時代に銀座の煉瓦亭が牛肉で作るフランス料理のコートレットを、手軽に手に入る豚肉で作ってポークカツレツという名前でメニューにのせたこと。
叩いて伸ばした薄い豚肉をフライパンで揚げ焼きするのがカツレツで、ナイフフォークで切り分け食べる。
それをアレンジ。
分厚い肉を揚げて切り分け箸で食べられるよう提供したのがこの王ろじ。「とんかつ」と名付けたのも、ここなんだという。
洋食が和食になった記念すべき場所と思うと感慨深い。

「昔ながらのあたらしい味」と書かれた看板に、昔ながらを守りつつ、今なおあたらしさを失わぬ料理を作り続けてるという誇りを感じる。
好きな店。
開店前にちょっと並んでカウンターへと案内される。かつて5人座れたカウンターが今では3席。ゆったり座れることはありがたいけど、お店の人は大変だろうなぁ…、って思う。
申し訳なくありがたい。

ここでは大抵「とん丼とん汁」を注文する。
けれど今日は「とんサンドイッチ」を食べたくってやってきた。
とんかつサンドイッチのことをほとんどの店が「とん」を略して「かつサンド」と呼ぶ。けれどここでは「かつ」を略して「とんサンド」。
そう言えばとんかつをのせた丼も「かつ丼」でなく「とん丼」。「カツレツ」を「とんかつ」と名付けたお店ならでは。歴史を感じます。
大食漢を気取っていた時期。タナカくんと来てそれぞれとん丼、とん汁たのんだうえに、サンドイッチをひとつたのんで分けて食べてた。
思い出料理。
とん汁をお供にもらってひと揃え。

6枚切りの食パン2枚。
焼かずにそのまま。
とんかつをソースにくぐらせ千切りキャベツと細切りきゅうりをのっけてパンで蓋して6つに切る。
ちょうどひと切れがひと口サイズ。
ドッシリとしたステンレスの皿がどこか古くてあたらしい。

断面をみるとカツは分厚く、指でつまむとずっしり重い。
揚げたてのカツの蒸気でパンがしっとり濡れてて、手にした感じは肉まんの生地のようにふかふか、ふっくら。
口に含むと舌がそのふっくらをまず感じ、噛んだ途端にパンはたちまち気配を消して挟んだカツが暴れだす。
パリパリとした衣が特徴。最近のとんかつはやわらかさとかふっくら感を一生懸命追求するけど、ここのとんかつは肉そのものがガッシリしていてたくましく、しかも衣がザクザク壊れる。力強くて騒々しい。

お皿の縁に練り芥子。
カツにたっぷりのっけて食べると、ツーンっと鼻から香りが抜けて後口すっきりしてくれる。
千切りキャベツもきゅうりもシャキシャキカリカリ。
顎で味わうおゴチソウ。

ご飯のおかずに食べるとんかつもおいしいけれど、すべてのものが口の中でひとつになってく一体感と醍醐味はサンドイッチだからこそ。

サンドイッチにとん汁という組み合わせが大正モダンでありましょうか。
そもそもここのとん汁は炒めたベーコンが醸す風味がどこかハイカラ。豆腐にしいたけ、玉ねぎも炒められていて香ばしくとんかつの味に負けぬおいしさ。
お腹もあったか…、満ちました。


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