見出し画像

とん丼とん汁、昔ながらのあたらしい味

ひさしぶりの「王ろじ」。

創業大正10年という店。明治時代に銀座煉瓦亭で生まれたポークカツレツが、大正時代のこの店で「とんかつ」という料理になった。
…、と言われる店でもあったりする。

「昔ながらのあたらしい味」と書かれた看板とおり、昔ながらを守りながらも、今なおみずみずしくてあたらしい料理が揃う。
オキニイリ。
来るたびお店の人が増えてる。ご主人、奥さんは多分ボクと同じくらいの年齢で、若い人たちが今は3人。まだまだ続いていくんだなぁ…、って思うとニッコリ。いいなと思う。
一階席が満席で、地下のテーブルをもらって落ち着く。

まずはお茶に王ろじ漬け。
薄切りの大根をピーマンやニンジンと一緒に麹で漬けた漬物。歯ざわりパリパリ、ピーマンの緑の香りがマリネのようなハイカラ味になっているのがちょっと独特。

とん丼、とん汁がいつもの注文。
とん丼はここの名物。7割くらいの人がたのんでいるんじゃないかなぁ…。それ以外にはとんかつセット、カツサンド、インディアンカレーとメニューは少ない。ヒレとかロースとか面倒なことは一切言わずただとんかつと言い切るところがボクは好き。
それにしてもお店はいつもキレイに整っている。窓のない地下にあって空気までもがキレイというのがまたステキ。
しばらく待って料理が到着。

ボウルにご飯、カレーにとんかつ。とんかつの上にソースがかけまわされててカツカレーでもなく、カツ丼でもカツカレー丼でもないオリジナル。

とんかつがまず独特です。
衣は分厚くパン粉と卵が渾然一体。
ふっくらバリバリ、硬く揚がったフリッタみたいな仕上がりで肉も独特。
筋をしっかり切った豚肉を筒状にしてガリッと揚げる。
それを3つに切り分け並べてる。

ザクッと分厚い衣が壊れ、肉はふっくらジューシーでしかもやわらか。
バリバリ壊れる衣がやわらかな肉の食感引き立てる。
ご飯は硬め。カレーをまとっておいしい状態。
カレーはスパイシーで旨みもしっかりしてるのだけど、ちょっとひと味足りないのです。酸味や甘みといったひと味。それをソースがおぎなって、おいしく味が整っていく。
若い頃にはこのひと味足りない具合が好きじゃなかったんだけど、歳を重ねた今となっては自分の味を自分で作れるところがうれしく、ありがたい。

とん汁もとんかつに負けず劣らず独特で、注文受けてから炒めることがはじめるのです。
ベーコン、玉ねぎ、しいたけを油と一緒に炒めたところに出汁をはり、味噌をとかずにそのまま入れる。豆腐をクツクツ炊いてあっため出来上がり。
焦げた玉ねぎの香りがおいしく、焼けたベーコンの脂が汁をコクをつけてるハイカラな味。カレーで疲れた舌がやさしくリセットされる。

ちなみにこのとん丼用の器。ボウルの部分と下皿がくっついている独特のモノ。カスタムメイドだからコストもかかるだろうし、洗ったり収納したりもめんどくさいに違いなくそれでもずっとこのやり方を変えぬところが「昔ながらの新しさ」。いいなと思う、オキニイリ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?