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絵師としてのタナカくんを想う…。

今日はタナカくんの月命日。
画家としての彼の最晩年の話をしましょう。

ゲイ漫画家としての活動を40代の半ばですっかりやめてしまって、それからボクと一緒に業務漫画をいくつか描いた。
けれどそれも彼にとってはそれも心から納得できる仕事じゃなかった。
だからしばらく、ほとんど何も描かない時期がありました。

4年ほど前のことでした。
美術展で「月岡芳年」の絵をみて、まるで雷に打たれたようになったのですネ。
絵の前から動かずずっと見続けて、家に帰ってインターネットで彼の作品を探して見ては、それを手本に絵を描きはじめた。
最初はそのまま。
次第にアレンジを加えながら、飽きずずっと描いていた。

そしてある日。
こんなの描いてみたんだけど…、って見せてくれたのがこの一枚。

月岡芳年の「月百姿」という画集の一枚をボクをモデルになぞった絵。
その筆使い。
その構図。
そしてなによりボクの表情。
すべてがステキで、ボクはたちまち気に入ってその日のうちにFacebookのバナーをそれに変えたほど。

『月百姿』(つきのひゃくし、つきひゃくし)は、月岡芳年が1885年(明治18年)から1892年(明治25年)、数え47歳から54歳の時に発表した浮世絵の連作。月をテーマとした全100点揃物の大判錦絵である。
のべ8年を掛けて完結し、1892年(明治25年)6月の芳年の死の直後に100作品に目録と序文を添えた画帖が発売された。後述するように幅広い画題と多彩な画風を駆使して描かれ、芳年の最後の大作・代表作の一つと評価されている。本作における画号は大蘇芳年。版元は日本橋の滑稽堂秋山武右衛門。

wikipediaより

「これ、すごいよ。感動しちゃう」って褒めたらそれがうれしかったのでしょう。
数日後に「こんなのも描いてみたよ」って見せてくれたのがこれでした。

これも同じく、同じ画集のなぞりの一枚。
モデルは自身…、タナカくん。
月に向かってスッと右手を伸ばす姿が凛々しくて、まるで空にそのまま飛んでいきそうな勢いのあるステキな絵柄。
これを描いた半年後に、本当に空に飛んでいってしまったんだけど、この絵でたしかな手応えを感じたのでしょう。
次々、絵を描いていった。

もう20年も前に「東京コロコロ隊」っていうのを友人4人で作ってた。
みんなコロコロしていたから(笑)。
定期的にあって食事をしたりライブにいったりおしゃべりしたり。
後にふたりが実家の町に戻って体は遠くなったけど、気持ちはずっと近いまま。そんなふたりを続けて絵にし、都合8枚。うち二枚が未完のままで逝ってしまった。

100枚全部描いてやる。
そうほがらかに宣言したから、100枚描いてコロナが明けたら個展を開いてあげるから…、って約束してた。
もっとたくさん描きたかったに違いなく、絵を見ているとなつかしいやら、くやしいやら。かなしいけれどしょうがない。

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