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讃岐出身の父にとってのナンバーワン釜揚げうどんを食べにくる

ボクの父は讃岐の出身。
讃岐うどんに対する執着はすごいもので、東京に住んでいたときにはおいしい店があると聞けば飛んで行ってた。
まめに記録をとる人で、生醤油うどんの部だとか肉うどんの部だとか、部門別にランクをつけていたりした。
そんな中で別格の「釜揚げうどんの部讃岐超えナンバー1」に輝いた店が「やしま」という店。

渋谷の宇田川町にあって、たしかにうまくてボクもたまに行っていた。
タナカくんと付き合いはじめ、彼が高松にしばらく住んでいたことを聞き、旨い釜揚げうどんが食えるんだよ…、って連れて行ったら「こりゃ、絶品だネ」って気に入った。

宇田川町の店はなくなり、円山町に移ったと噂に聞いて来てみたら、店いっぱいにフィギュアが飾られたまんだらけみたいな店でこれまた気に入った。アニメや漫画が大好きだったから、どれかを指差し「あれは何?」って聞くと即答。ニコニコしながら、「この店大好き!」って言っていた。

ひさしぶりにきて、ひさしぶりの釜揚げうどん。
注文してから麺を切り、茹でて仕上げる。
だから時間がたっぷりかかる。
待つ間をずっとフィギュアを眺めて潰しつつ、お待たせしましたとやってくる釜揚げうどんのうつくしきこと。

お湯の中にゆったり浸かった飴色の麺。
つやつや光り、太いとこあり、細いとこあり、厚くもあって薄くもあって不揃いなのが手切りならでは。まずはなにもつけずにそのまま一本。

表面ツルン、芯は硬くてまだ粉っぽさを感じるほど。塩がしっかりきいていて噛めばうま味や甘みがしみだしてくる。

タレはいりこの香りと渋みがまじるほどよき味わい。あくまでうどんが主役で、その味わいや香りを邪魔せぬほどよさ。それがよい。

お湯に浸かって徐々にうどんに熱が入ってやわらかになる。
噛んだ感じはむっちりと、のどごしぬるんととてもなめらか。筋肉質で男性的だった麺がどんどん女性的でつやっぽくなってく感じ。とはいえコシが抜けるようなことはなく、芯が一本ストンと通ったままで、噛みごたえもある。

透明だったお湯がどんどん白濁し、それにつれてうどんがやわさを増していく。「器の中に何種類ものうどんが入ってるみたいな感じがたまらないよね」ってニコニコしながら食べていたのを思い出す。

湯桶に釜湯がやってくる。タレを薄めて飲むと出汁の風味が心置きなく味わえてお腹もしっかり満たされる。「おいしかったよ」って席を立ちます。オキニイリ。


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