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渋谷の福田屋、おかめそばで戯れる…。

再開発で必死にキレイを装う渋谷という町。
けれど長年染み付いた猥雑が決して消えることなくむしろその猥雑こそが渋谷の街が魅力的な部分なんだけど、渋谷の大家さん、東急殿は決してそれを認めようとせぬ。
でもキレイな渋谷には魅力的な店は少なく、猥雑な路地にはおいしい店がひしめいている。
そんなおいしいお店のひとつ、福田屋のおかめそばがボクは好き。
具材をおかめの顔に見立てるおかめそば。数あるおかめの中でもここのおかめほどくっきりとして賑やかなおかめの顔は他にない。

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渋谷の街を代表するような老舗です。
にもかかわらずお店で働く人の半分ほどがアジア系の人たちで、礼儀もしっかりしているし働き者で、気持ちいいほど声が出る。日本の老舗の伝統的な日本の味を支えているのがアジアの人たち。今の日本の現実をしみじみ感じる。なやましい。
厨房の中から調理補助のインド系のおじさんが、ゆっくりゆっくり。
小さな歩幅でお盆を揺らさぬようにゆっくりやってきて、お待たせしたってそっとテーブルの上に置いていく。
おかめの顔を壊さぬように…、といううれしい配慮。
おじさんの精一杯の心配りのかいあって、丼の中には見事な顔が微笑んでいる。

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海苔の眉毛の上に蒲鉾の目、ほっぺの一つは色黒椎茸、オレンジ色のニンジンの右頬に筋の通った竹の子の鼻。肌色のお麩、厚焼き卵の唇とどのパーツも大きくきっぱり。絵ならばゴーギャン。肉感的にウットリします。

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そばをたぐって食べようと思うも、顔を壊してしまうのはいささか無粋と、壊さぬようにと注意する。
麺をたぐって具材を食べて、どこまでおかめの顔のようであるんだろうと思って食べる。
まず椎茸とお麩を食べる。
どちらも汁をたっぷり吸い込みみずみずしくてなんとも旨い。
ほっぺたもちょっと肉付きが悪くなりスリムになったような気はする。
かまぼこをひとつ、そしてニンジンを食べてなくした片目の代わりを麩にしてもらう。
ほっぺがなくても顔に見えるもんだねぇ…、と蕎麦をずるずるたぐって汁も飲む。細いけれどハリがあって、ザクザク歯切れる蕎麦はおいしく鰹節の酸味がキリッと後口ひきしめる汁も絶品。
鼻のたけのこを半分と、厚焼き玉子も半分食べる。
ちょっと困ったような表情になり、ごめんなさいねとそれでもパクパク食べ続ける。
卵焼きを全部食べると口がなくなり、かまぼこを代わりに場所替え。代わりにネギを目の場所に置く。鼻もなくして、けれどかまぼこが笑った口のように見せ、目と口だけがあればなんとか顔に見えるネ…、って思ってズルン。大好きなお麩だけ残して写真をパシャリ。たのしいお昼となりました。


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