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佛跳牆に麗しき点心、エビワンタン麺

銀座の「喜記」。「ヘイゲイ」と読む香港料理の専門店。

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香港や台湾に行くといつも探してでも食べるのが大きなシャコで、日本じゃなかなか見かけない。
ここは香港式の海鮮料理に力を入れてて、大シャコやカニやハタの入荷があると電話をくれた。そのたびタナカくんといそいそやってきて舌鼓…、というなつかしい店。

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中華料理は一人じゃなかなかたのしめぬ店。
それでしばらくご無沙汰だった。けれど点心を中心にしたランチコースをはじめたというので来てみた。
通りに面して小さな入り口。階段上がるとドアはなくっていきなり店内。香港の食堂っぽいインテリア。お店の人はキビキビしていて心地よい。

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まずは前菜。蒸し鶏のネギソースに野菜の酢漬け。
この組み合わせは紹興酒をおねだりするんだよネ…、ってタナカくんのオキニイリ。ネギと塩、脂だけで出来てるソースだけでもお酒が飲めるもんね…、っていう彼の顔が思い浮かんだ。

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それからスープ。陶器の壺がうやうやしく運ばれて、蓋を開けるとおいしい香りが湯気と一緒に漂ってくる。

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佛跳牆(ぶっちょうしょう)。あまりにもおいしい香りに仏様まで跳んでくるという名前の由来通りの香りにお腹がなります。目の前で注がれるスープのクリアなことにまたウットリ。
牛すじ肉に野菜、さまざまな乾物がたっぷり入って味わい濃厚。

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大根、にんじん、セロリや白菜。野菜はスープをたっぷり吸い込んでみずみずしくてまるでスープが固形になったような風合い。牛すじ肉はクチャっと潰れて脂がとろける。仏様だって神様だって、これを出されりゃ跳んでくるよな…、ってしみじみ思ってしみじみ食べる。

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そして点心。
まず蒸したものが3種類。
せいろの中に肩をよせあい詰め込まれているひとつひとつが愛らしく、湯気と一緒に舞い上がる香りがおいしい。
そしてなによりひとつひとつがうつくしい。
お坊様の帽子の形をした餃子。
中には真鯛が包み込まれて、鯛独特の奥歯をひっかくような感じが徐々にねっとりとした生地と一緒にとろけてく。
桜の葉っぱで包まれている巾着状の生地の中には刻んだ野菜。
色とりどりの野菜が透けてみえるところにウットリします。
春菊を練り込んだ緑の生地には小柱ぎっしり。大粒でキュッキュと歯切れて口いっぱいがうま味ジュースで潤うゴチソウ。

揚げ点心が2個やってくる。
ひとつは細切りの大根を金華ハムと一緒に炒め煮。それをパイで包んだものでホロッとパイが崩れると同時にザクッと千切りにした大根が奥歯に当たる。その触感のにぎやかなこと。
もうひとつは鶏肉のクリーム煮を包んだ揚げ餅。ぽってりとした餅の食感、香りがおいしい。
甘く煮付けた叉焼をたっぷり包んだ叉焼饅でひとそろえ。

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お腹もほどよく満ちかけた頃、真打ち登場。「海老ワンタン麺」。
透き通ったスープに極細の香港麺。ざっくり歯切れて散らかる感じは独特で、浮かんだワンタンはエビがブリンと弾けるような力強さ。エビの風味に甘みにうま味。包んだ生地はひらひらと口の隅々を撫で回しつつ、気づけばすっかり姿を消して包んだエビの餡だけになる。

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なによりスープのおいしいコト。金華ハムのうま味にネギの油にエビの風味。すっかりスープを飲み干して器の底に残るえび味噌の大量夏ことにウットリしました。

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〆にマンゴーのピュレをスープに仕立てたデザート。申し分なきオゴチソウ。この世にはこんなにおいしいものに溢れてて、一緒に行きたいお店だってたくさんあるのに、なんでいなくなっちゃったんだよ…、って泣きたいくらいにおいしかった。
絶対好きに決まっているもの。だからまた来る。オキニイリ。


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