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お見送りまでがおもてなし

銀座で朝をはじめる今日。トリコロールで朝食とする。

煉瓦造りの一戸建て。回転扉を押して入ると、漆喰壁に貼り煉瓦、木の床、赤いビロード張りの椅子にソファ。
カウンターを飾る真鍮製の手すりはいつも見事に磨かれピカピカ。
贅沢な空気が店の隅々満たす、これが銀座とウットリします。ここと銀座ウエスト本店は銀座の宝。
女性だけで運営しているお店です。
全員、白いワイシャツ、黒いベストにズボンをはいて凛々しく、けれどおだやかに働く姿がなにより特別。
もしここで同じ格好の男性が働いてたら、重たい空気のお店になったに違いない。いらっしゃいませ、お待たせしました、ありがとうございますの声も明るく、やわらかい。

朝のセットは1種類。トーストにバターにジャムにサラダに飲み物。あったかいコーヒーもらってのんびり待ちます。

ザザーっとコーヒーの豆を瓶から瓶に移す音。
ショパンのピアノにほどよいざわめき。
お待たせしました…、とメインの到着。

トーストの焼き方に注文つけなくてもボクの好みの焼き加減で仕上がってるのにニッコリします。

ひと息遅れて朝のコーヒー。

銀製のポットにおさめたサイフォンだてのコーヒーがうやうやしく注がれるさまに背筋が伸びる。
カップの中から手元に目線が走り、伸びた背筋の先に笑顔を見つけてニッコリ。そして再びカップに目線を移すと湯気をまとったコーヒー一杯。あぁ、しあわせだ!ってしみじみ思う。

みずみずしくて状態見事な野菜のサラダ。トマトがなによりおいしくて、甘酸っぱさに目を覚ます。
トーストをひと口分ちぎってバターとジャムをのっける。

あらかじめ塗りやすいよう温度を上げたバターをたっぷり。果肉を残したいちごジャムは種がプチプチ爆ぜる感じがたのしく、おいしい。
よく焼かれ、生地の水分が程よく抜けたパンの食感のおいしいコト。サクサク壊れ、口いっぱいに散らかっていく。

パンそのものが硬い仕上がり。フランスパンの生地を使って焼いた食パン。塩気がおいしく、最初はザクザク乾いた感じがするのに徐々にもったりしながらとろけて消える。オキニイリなり、オゴチソウ。

今日ははじめて入り口脇の窓際の席に案内された。
朝の光が気持ちよき席。

しかもお店を出るお客さまを見送りながら、回転ドアを両手でそっと止め、深々頭を下げる、お店の人の様子にウットリできる席でもあった。
ありがとうございますの声を背中に聞きながらも、振り返ることがまずなくボクも気づかなかった。
飲食店のよきサービスは、お出迎えとお見送りの一瞬に凝縮される。
いい店だなぁ…、って感心します。

ザックリ焦げたトーストの端でバターとジャムをぬぐい取りお腹におさめてコーヒーで〆。
ミルクをたっぷりそそいでゴクリ。

苦味がしっかりとしたコクのある味。
熱々のときに感じた酸味は鳴りをひそめて、深い風味とやさしい旨みにうっとりしました。しばらくのんびりいたしましょう。


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