定食屋より飯屋、あるいは居酒屋の朝食
「夜と朝のあいだに」とピーターが低音の魅力で妖艶に歌い上げたのは1969年。ボクが9歳の秋のコト。
今年60のおじさんのボクは「朝と昼のあいだに」歌舞伎町。
ちょっと早めの昼ごはんを食べたくて磯丸水産の歌舞伎町店にきた。
11時スタートの昼ごはんでいささか少々せわしなく、そういうときに24時間営業のこういう店はきわめて重宝。10時ちょっとすぎという時間にしてすでにペロンペロンのおじさんたちのグループや、ひとりで食事をとりにくる人と自由な空気。
ゴジラロードと名前のついた映画館ビルに向かう名所通りに面してあって、だからインバウンドの人たちでにぎわっていた。そのにぎわいは今日はなし。
でも案外、通りはにぎわっていて、さすが週末。ホッとする。
お通しの丸いかまぼこ、さつま揚げに魚の生干し。早速、網の上にのっけてそれだけではさみしいからとサザエのつぼ焼き、カニ味噌の甲羅焼きをおいて炙った。お供は青汁。健康な朝(笑)。
朝飲みでなく朝ご飯。それでご飯のおかずになりそうなものをあれやこれやと。
鮭のハラス焼きなぞはまさに朝にぴったりのご飯のお供。脂がのった皮付きのハラスがしっとり、みずみずしく焼けていて身はおいしい。ただ皮はバリッとしてくれてなく、だから付き合ってくれた友人にすべて進呈。一番脂のおいしい部分が口にはいってこないというのをちょっと悔しむ。
カンパチの刺身のゴマ醤油和え。脂ののった魚の切り身とゴマの相性は抜群でご飯のおかずにもまたいい感じ。
アジフライも分厚く大きい。おそらく衣をつけた状態で凍らせている冷凍食品だろうと思う。けれどサクサク、身はホクホクで冷凍技術のすばらしさと揚げたてという魔力にウットリしながらハフハフ食べる。
ご飯とあおさの味噌汁が朝のメイン。
焼いた魚があって、刺身があってフライがあってと、ご飯でお腹をいっぱいにさせるのにこれほどのシアワセな食卓ってあるだろうか…、ってしみじみ思う。
日本料理屋さんって、定食にこだわりすぎる。
それさえ頼めばお腹がいっぱいになる組み合わせに定価をつけて売るのだけれど、そのお腹いっぱいにしかたというのはお店の押し付け。
おかずを一杯ズラッと並べて、みんなであれこれつまんで食べるなんて、家なら当たり前のことがお店でできない。
「定食屋」よりもボクは「飯屋」という業態の方が好きで、この店はそういう使い方ができるというのがなんdかあうれしい。
カンパチの胡麻和えをご飯にのせて、ちょっと熱をくわえたところに熱々のカニ味噌。そしてパクっと食べると、飯がいくらあっても足りないほどのおゴチソウ。
野菜も食べなきゃと釜揚げしらすのサラダをとれば、これもご飯のおかずになった。
どうしてもサザエのつぼ焼きを焼きたくてとったのだけど、お店の人が口を下にして焼いて下さい…、って厳しく言う。なんで?と聞くと上にして焼くと中から汁が噴き出して危ないんです…、っていう。
その噴き出す汁がおいしいのになんでと思うも、仁王立ちしたおねぇちゃんがボクらのほうをじっと見ている。多分、このオヤジたちは言ったとおりにしないぞと直感したのでありましょう。しょうがないから言われたとおり。当然のことながら汁はすっかり下に落ち、仕上がったサザエはカラカラ。まぁ、それでもクニュクニュ食感、味わいおいしく我慢しました、朝のコト。
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