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しゃぶしゃぶという料理の概念がリセットされるご馳走しゃぶしゃぶ

夜をしゃぶしゃぶ。「代々木今半」という店を選んだ。

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かなり手広く多店化している「人形町今半」の創業一族の一人がやっている、ココ一軒だけ。
オリジナリティーあふれる店で、今日はココで食事をするって思っただけでこの一週間ほどウキウキ気持ちが盛り上がったほど。
代々木の駅から真っ直ぐ歩いて5分ちょっと。そろそろ住宅街に入りそうな場所のビルの地下一階。

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店に入るとテーブルの上には鍋が用意されてて乾杯用に前菜ふたつ。茹でたキャベツと蒸したタン。脂ののった牛肉を煮て佃煮にしたモノと、どちらも肉の旨みが滲みだしてく名品。
それにしてもこの鍋…、ピカピカキレイに磨かれていて、しかも2人にひとつ。普通しゃぶしゃぶの店は4人で鍋ひとつ…、っていうのが当然なところここでは贅沢に2人にひとつというおもてなし。

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しゃぶしゃぶというのは寄せ鍋なんかと違って、たっぷりのお湯の中で素材を泳がせることではじめておいしくなる。
だから2人にひとつという、こだわり守る。
心意気がいいなと思う。
ココのおすすめコースをたのむ。
牛タンのしゃぶしゃぶからスタートします。

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東京で牛タンのしゃぶしゃぶをはじめて扱ったというので有名。ココの看板料理のひとつ。
ドライエイジングを正しく施した牛たんで、ほどよき厚さにスライスされてる。
それを一枚。
お湯に沈めて泳がせて、表面の色が変わったところで引き上げる。
豆苗を数本箸で挟んでしゃぶしゃぶ。タンの上に寝かせてクルンとくるんで食べる。

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塩が8種類、用意されてる。
ニンニク塩にレモン塩。赤唐辛子にバジルの風味を加えた塩にブラックペパーや梅とさまざま。それをたっぷりふりかけパクリ。
ザクッと歯切れてシコシコとしたタンの食感にシャキシャキとした豆苗独特の食感混じって噛むのがたのしい。豆苗の青い香りが牛たん自体のクセをなだめて、塩の種類を変えると味の傾向がまた変わる。
塩で食べるというのがいいのでしょうネ…、タンそのものの旨みがそのままたのしめる。器の中にタンから滲んだ汁がたっぷりたまるのだけど、それそのものがまたおいしくてズズッと飲みつつ食べ進む。

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それから豚肉。
正真正銘の黒豚を、衛生基準を満たした場所で肥育しているのだという肉で、淡いローズの色がキレイ。
なにより脂がしっかりしている。
これも熱を加えすぎないようにと一枚。

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お店の人がこのくらいでいいですからネ…、とお湯にくぐらせゴマダレの入った器にそっと置く。
肉はまだほんのり桃色。食べるとまったり、ゴマダレと一緒に口にやってきてザクッと歯切れる。途端においしい肉汁ジュワリ。しかも脂のおいしいコトにはウットリします。トゥルンと舌を撫で回しユックリとけて甘みを残す。かなり濃厚なゴマダレなのに、それにまるで負けないたくましい肉。さすがこれが黒豚パワーか…、ってニコニコしながら食べていく。

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野菜が一緒にやってきます。かなり多彩で豆腐にネギ、舞茸、エリンギ、しめじにエノキ。アスパラガスに葛きり、ニンジン。それらを熱の通りにくい順にひとつひとつ鍋の中にお店の人が入れてくれる。これはどこどこ産のモノ。キノコはあまり火を加えぬよう。豆腐は小さく切り分け口に運ばないと喉を焼きます…、などなどたのしくおいしい食べ方を説明しながら鍋をキレイに整えていく。

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葛きりは小さな網に入れて湯がいてゴマダレに。ズルンと食べると口の中がそのゴマダレの旨みで満ちる。まるでゴマダレを固形にしたものが口の中にいるような、そんな感じにビックリします。

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ネギは押さえて芯だけ抜いて、別々にして食べてください。
全部を一緒に噛むと熱々の芯が飛び出し喉を焼く。
喉鉄砲に襲われぬよう…、と言われてそうして食べると芯と周りの部分の味や食感がまるで違うのにまたビックリ。
周りはパリパリ音をたて、芯はトロリととろけて甘い。
食べ方ひとつで同じ素材がこんなに違う…、オモシロイなぁとまた感心。
ああ食べなさい、こう食べなさいと世話を焼きすぎる店はあまり好きではないけど、ココの世話焼き具合はたのしい。
そうしなくてはならない理由までしっかり教えてくれるから、素直にそれを実践しようと思うのですネ。
しかもそうして食べると、今まで食べてたしゃぶしゃぶが一体何?ってビックリするほどおいしいところがまた憎い。

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そしてメインの牛肉が来る。
見事な肉です。色はキレイで脂が細かく入ってる。ある程度の厚さで切られてはいるけれど、大きな一枚。それをそのまま持ち上げてお湯につけるとちぎれてしまう。だからクルクル、丸めて箸で持ち上げて…、と言われてクルクル。葉巻状にして持ち上げて、お湯に浸して箸から放す。
するとフワリと一瞬肉が広がって、熱が入ってまた閉じていく。それを箸で持ち上げタレに浸してパクリ。

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口の中でとろけます。とろけながら、肉の甘味や旨みをにじませたちまちきえる。もっと味わっていたいのに口溶けがよく、あっという間にお腹の中に入ってく。

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肉のおいしさもさることながら、タレがおいしく力強い。しかも最初に用意されてたタレがずっとおいしいままでいてくれるのです。普通、しゃぶしゃぶを食べてるとどんどんタレが薄まってどこかで追加をしなくちゃいけなくなるのだけれど、ずっとおいしい。なぜなんだろうと不思議なほどのタレのおいしさ。

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それを最後に堪能して〆。ゴマダレに吸ったニンニクと辛子味噌をいれスープで述べたモノに中華麺。肉味噌くわえてズルリとやるとなんとおいしい担々麺。アイスクリームとコーヒーでお腹に蓋して思わずニッコリ。また来なくちゃって思う店です、オキニイリ。


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