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特別な味わいを誰かに伝えたくなる、感じるコーヒー!

武蔵野館って映画館ビルが新宿駅の東側にある。

かに道楽の蟹が張り付き足を動かし、叙々苑や大箱居酒屋の看板が壁面埋めるサーバージャパンな感じの外観。
地下に「Covert Coffee」ってお店ができた。
コバート。
「隠れた」って意味の店名通りに目立たない場所。

新宿駅の地下コンコースから直接入れるフロアなんだけど、その入り口が小さく隠れているからひっそりしてる。
ZARAが同じフロアにあって、ZARAの営業時間になると明るくなるけど朝の時間は通用口かと思うほど。

恐る恐る来て、お店があって営業中。やっててよかった…、ってホッとする。意外感も先味のうち。

コンクリート色に木の色、観葉植物。引きしまっているけど決して冷たくはなく、広いテーブル、座り心地の良い椅子と居心地良さを感じる店内。いい空気。
レコードプレイヤーが置かれててジャズが流れておりました。

シングルオリジン。
ハンドドリップ。
一時期流行ったサードウェイブ的な特徴で、カウンターにズラッと豆が並んでる。

酸味がおだやかで苦味をたのしみたいのですが…、と聞いてみる。
浅煎りの豆を使っているので、深い苦味は出せないんです。フレッシュな酸味を味わっていただきたいのですが、中でもやさしい酸味の豆は「エチオピア」。それでよろしければアイスコーヒーで召し上がっていただくことをおすすめします…、と正直にして的確な、そしてなにより丁寧な説明にそれを試して飲むことにした。

紙のフィルター。
小さなフラスコ。
丁寧に落としたコーヒーを陶器のカップに入れて冷やして出来上がり。
グラスじゃないのがオモシロイ。

グラスに比べて厚みがあって、しっかり冷やしているからズッと冷たく手に触れる感じがやわらか。
なによりコーヒーの色を確かめながら味わえるのがいい感じ。

赤みがかった明るい茶色。コーヒー色というより小豆色って感じでしょうか。ストローが添えられず、自然とカップを手に持ち口に近づける。
香りも一緒に近づいてくる。
香りにすでに酸味が混じり、けれどやさしい。ひと口ゴクリ。舌の上を転がしながら味わうと明るい酸味がゆっくり消えてうま味が舌の中から滲みだしてくるのを感じる。そしてやさしい苦味を残して消えていく。

強烈な味や香りじゃないから舌や頭が一生懸命「なにか」を探す。
柑橘系のジュースのようであったりワインが舌に残す渋みや苦味だったり、いろんなものが頭の中を行ったり来たりしながら最後に、やっぱりこれはコーヒーなんだって思うほかない不思議なおいしさ。
ひとりで飲むのがもったいなくなる。感じたことを誰かに伝えたくなる魅力があるんです。味わうんじゃなく「感じる」コーヒー…、あたらしい。
飲んでるうちに氷がとけて色がどんどん薄くなってく。なのにコーヒーが薄くなるかと言うと酸味が薄まりうま味、風味を心置きなくたのしめるようになるのがたのしい。

ゆっくり時間をかけて味わい、お店の人に「これほどなめらかな酸っぱいコーヒーってはじめてでした」って言ったら「酸っぱいコーヒーが流行りですけどうちのは特別ですからネ」って。たしかに青瓶コーヒーとはまるで違って、これは好きですって答えたら、ニッコリしながら「またのお越しを」って頭を下げる。
コーヒーの世界は本当に多様でたのしい…、オモシロイ。


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