蕎麦屋の話

画像1 蕎麦。 歳を重ねるにしたがってしみじみおいしい…、と思えるようになってくる。 20代の頃にはなじみのバーがあるってステキと思ってた。 30代ではイタリアンレストランの馴染みになりたいと思ったし、40代は無理を聞いてくれる寿司屋を作ることに一生懸命になったもの。 ところが50を過ぎると贔屓の蕎麦屋がある生活って粋でいいよな…、って思って蕎麦屋をあれこれ訪ねた。 好きな蕎麦屋があちらこちらに。どれが一番好きとは決めることができないほどに蕎麦屋は多種多様。
画像2 ボクにとって一番手軽なオキニイリといえば「永坂更科布屋太兵衛」の新宿メトロ街にある店。 どこにでもありそうな気軽な街場のお店の風情。生粉打ちそばのみずみずしさと太さに負けぬタレのおいしさは格別で、スルンとたぐって小腹の虫をよろこばせるのにとてもよい。
画像3 そば粉100%の生粉打ちそばがおいしいといえば「総本家小松庵」。 新宿の高島屋だとか丸の内のオアゾだとか、ボクの活動エリアに都合よくお店を出してくれてるところもありがたく、背筋がのびる雰囲気がレストランのような使い勝手に向いているのもいい感じ。
画像4 中でも「生粉打ち三昧」というメニューがあって、生粉打ちそばを冷たいざるとあったかい鴨南蛮で食べ比べができるのですネ。同じ蕎麦でも温度が違うと、まるで違った食感になる。せいろの薬味に刻んだきゅうりが用意されているのがボク好み。ネギと違って辛味や強い匂いがなくてシャキシャキとした歯ざわりと緑の香りがさわやかでよい。
画像5 太い蕎麦といえば新宿御苑の近くにある「志な乃」という店が一番。 蕎麦も旨いが手打ちのうどんも旨い。しかも蕎麦もうどんもほとんど同じ太さというのが特徴的で、しかもタレがおいしいのです。 色は淡くて透明でひ弱に見える。なのに味がしっかりしていて太い蕎麦やうどんにしっかり味がのっかる。
画像6 ありがたいことに家から歩いて来れる場所。太い蕎麦であるからこその個性的なメニューがたくさん。例えば鍋焼き蕎麦は絶品。煮込まれ蕎麦が出汁をたっぷり吸い込んでネットリとろける。けんちん蕎麦も東京随一。こういうお店の近所に住めてありがたいなぁ…、と思う店。
画像7 寿司屋でも、蕎麦屋でも基本飲まずにテキパキ食べたら帰る…、ってボクなんだけど飲みたくなると来る店がある。 新宿の「大庵」という蕎麦がおいしい季節料理のお店で、新宿という粋な蕎麦屋が少ない街にありがたい店。せいろやざる、天ぷら蕎麦のような古典的な蕎麦もおいしい。けれど季節、季節に創意工夫あふれる蕎麦が発表されてそれをたのしみに通ったりする。
画像8 酒の品揃えも充実していて、ワインも日本酒も焼酎もたっぷりとした量で売られる。ほんのチョコっと思うもしっかり飲んでしまうというのがちょっとなやましいかな、困りモノ(笑)。
画像9 季節ごとの蕎麦といえば浅草の「尾張屋」。 雷門の近くに支店、そこからちょっと離れたところに本店がありボクが好きなのは本店の方。どこにでもある蕎麦屋の風情で、観光客より地元の人たちに愛されてるおだやかな空気がいい。
画像10 秋には松茸そば、冬になると小柱を海苔と一緒に浮かべたあられそば。夏になるときしめんと季節のそばをたのしませてくれる。そばとは日本の季節が作った料理なんだ…、としみじみ感じる。
画像11 そして季節を越えた揺るぎなさで好きで好きでしょうがないのが、神田のまつや。海外の人を連れてくるとたちまち虜にしてしまう、これぞ日本といった風情に気さくな人たち。老舗で高い評判の店でありつつ、気取ったところがひとつも無いのがうれしいところ。
画像12 エビを三尾、筏にならべて揚げた天南ばんそばがいつもの注文。蕎麦前に卵焼きとか焼海苔とかをたのしみたくはあるけれど、ここはテキパキ、小腹を満たしてスパッと帰るのが粋かなぁ…、と未だそうした夢はは絶えず。 最近、人気が過ぎていつもニギヤカ。しんみり静かに食事ができぬところが少々悩ましい。

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