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四ツ谷の昭和喫茶ロン、変わらぬお店の小さくて大きな変化…、それもよし!

四ツ谷の喫茶店「ロン」。
コンクリート打ちっぱなしの印象的な建物、そしてインテリア。高橋靗一さんというモダニズム建築の巨匠の手になるもので、椅子、テーブルにいたるまでオリジナル。
入り口脇に「当店は喫煙の店です」と貼り紙がはられていて、店の空気が煙って感じるほどにみんなおいしそうにタバコを吸ってる。
時間が昭和で止まった感じ。

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とてもなつかしい店です。
この店に来るようになったのは10年ほど前のことだから、それほど長いおつきあいじゃない。
けれどこの店のような喫茶店が昔はそこここにあって、けれどそれらのお店はどんどん姿を消していった。
だからこの店にくると、今はなきいろんな昭和喫茶のお店のことを思い出して、なつかしい気持ちになってくる。
そういう意味でなつかしい店。

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今日は入り口脇の特等席に10人近くの喫煙女子が集まってプカプカ煙を吐き出していた。禁煙にすれば女性客が増えると思い込んでるどこかのチェーンに見せてあげたくなる勇ましさ。

コーヒーとハムとチーズのサンドイッチをたのんでぼんやり。

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ここのサンドイッチは不思議なおいしさ。パンが乾いて感じるのです。日本のパンはみずみずさを競ってどんどんやわらかになる。ところがここのパンは固くてバサバサ、口の水分を吸い込み乾かすような食感。
それがおいしい。焼いていないからパンそのものの風味は残る。薄塗りしたマヨネーズやバターのとろけを強烈に感じられて、挟んだハムやチーズと一体となりとろけていくのが心地よい。ハムもチーズもどこにでもありそうなものたちで、それがパンの力でこれほどおいしくなるなんて…、といつも感心。

そう言えば昔のサンドイッチはみんなこういうパンを使って作ってた。だからバターを塗らなきゃいけないし、マヨネーズもマスタードもたっぷり使って仕上げてた。
でも今のパンはそれそのものがおいしく、そしてみずみずしくてだからバターなんて塗らなくていい。マヨネーズだってほんのちょっとだけ使えばしっかり味が整う。
でもレシピは昔のままであることがほとんどで、みずみずしさを通り越して水っぽいサンドイッチが結構増えた。味もまるで調味料を食べてるみたいでパンも具材もなんでもいい…、って感じさえする。勿体ない。

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あっ!と思ったのがコーヒーカップが変ったこと。
今までは分厚い陶器の小さなカップ。持ち手も小さく、熱々のコーヒーをなみなみ注いでくるから、お皿と一緒に持ち上げ啜り込まなきゃいけないという、ちょっと不親切な昔ながらの喫茶店的カップだった。
今日のは薄くて大きくて、持ち手も大きく飲みやすい。でもあの分厚さと不親切こそが日常の隣にひょっこり顔出す非日常の象徴みたいで好きだった。ずっと熱々が続いたしね…。
もうああいうカップを焼いてくれるところがなくなっちゃったんだってお店の人が言っていた。

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まぁ、しょうがない。
ミニチュアサイズのピッチャーやコーヒーかすを入れた灰皿。ピカピカに磨き上げられたシュガーポットが昔のままでがんばっている。ありがたいなと思ってのんびりいたしましょ。


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