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作れる料理、作れぬ料理

飲食店の料理には、「これはプロじゃないと作れない」と思える料理と、「これなら作れるかなぁ」と思わせる料理がある。
誰にでも作れそうな料理ばかりのお店は、素人くさいけど気軽なお店。
これはプロじゃないと無理と思う料理ばかりのお店は、差別化されているけれどちょっと堅苦しくて面倒くさく感じたりする。
だからその両方のバランスがとても大切。

…、なんだということを、先日、熊本のworld beer terminal KAENというビアレストランでしみじみ思った。
クラフトビールの品揃えに自信のある店。
来たのは町中の支店で、本店は郊外。ファクトリー風の造りの店で、ビールのタンクがズラリと並ぶ景色が圧巻。この店も壁にノズルがズラッと並び、思わず喉をならさせる。

ビールをおいしくさせる料理が多彩に揃う。
本店時代から人気の料理をまず2種類。
ひとつはカマンベールチーズをはちみつの海の上に浮かべてウォッカをかける。火を付けこんがりチーズが焼けたところで食べるというモノ。
チーズの上に黒胡椒がたっぷりちらかり、甘い。なのにピリッと辛くてビールがすすむ。
これなら自分で作れるよなぁ…、って思わす料理。
一方、生のトマトに液体窒素をかけマグの中でかき混ぜながら凍らせオリーブオイルで味わう料理もあったりする。
マグの中の温度はマイナス196℃。あっという間に凍ってカランコロンとお皿の上に転がりだしてくるのがたのしくおいしい。
そしてそれは、とてもじゃないけど自分じゃできない料理の代表。

ビールのお供に肉をガッツリ食べてって、っていうのがここのお店のコンセプト。
ジャンボンブランにソーセージとどちらも自家製。
バッサリとした食感のジャンボンブランは噛みしめるにつれ、豚肉独特のさっぱりとして繊細な旨味が広がる。
口の中に含むとたちまち、あらびきの肉に戻っていくようなソーセージとどちらも仕上がり独特で、同じものを買ってくるなら気軽にできる。でも一から作ろうと思うと難儀する料理。
これは「売ってくれたらいいのになぁ」と思わす料理で、それもなんだか悪くない。

牛の赤肉を使った料理を2種類たのむ。
ひとつはレアカツレツ。分厚い牛肉に薄く細かなパン粉をつけて揚げたもの。
芯が真っ赤で生肉みたいにみえるも、実は芯までしっかり熱が入ってまさに見事なレアな牛カツ。歯ごたえもがっしりしていて、よく揚がったパン粉が散らかり口の中がにぎやかになるおゴチソウ。
この状態を作り出すのは温度管理をしっかりしなくちゃいけなくて、プロでなくちゃなぁ…、としみじみ思う。
一方、赤肉の鉄板焼は鉄板がよき仕事をする料理。
焼きすぎると固くなるからとひっくり返してジューッとやって、みんなで奪い合うようにして喰う。
食べるというより喰らってたのしむおゴチソウ。この鉄板がほしいなぁ…、って調理意欲より購買意欲が高まっっていく(笑)。

ビールと言えばやはりフィッシュアンドチップスを忘れることができないでしょう。
特に英国のエール系のビールとの相性抜群。
分厚く大きなたらをガリッと揚げたのにフライドポテトをたっぷり添えて、モルトビネガーで味わう趣向。
英国式です。
どっしりとした油の重さを軽くして、しかも風味豊かなお酢のおかげで食べやすくなる。そうだ、ケンタッキーフライドチキンをモルトビネガーで食べてみるのも悪くないかもと、これまた購買意欲をわかす。

さてこの週末に作ってみるのも悪くないな…、と思った料理。
ひとつは紫キャベツのコールスロー。
紫キャベツを刻みます。
食感残してザクッとさせた細切りを軽く塩して休ませて、絞ったところにブルーチーズをちぎって加える。
オリーブオイルでドレスして最後にパルミジャーノで風味整えればなんとこれに近い味になるんでしょうネ。
青カビチーズ独特の風味と軽い苦味とコク。紫キャベツの渋みがひきたつ大人のゴチソウ。これでサンドイッチを作ったら旨いだろうなぁ…、って思ったりもする。ワクワクします。

それからベーコンとポテトのサラダ。
ピクルスを加えて酸っぱく仕上げたポテトサラダ。ハーブ野菜をたっぷりまぜて風味整え、そこに焼いたベーコン一枚。
刻んであらかじめ入れてもいいんだろうけど、この大胆さがむしろいささかプロっぽい。
ツヤツヤとしたベーコンの脂のテカリが食欲さそい、結局、それをお皿にとって刻んで戻して混ぜて味わうことになるんだけれど、あのベーコンが今口の中にあるんだという視覚の記憶が料理をおいしくしてくれる。

もし時間があったなら。
あるいは週末2日がカラッとよく晴れた日なら作ってみようかと思う料理が最後の料理。
小さなみかんを皮ごとスライス。乾かしパリッとしたのにクリームチーズをのっけたデザートにもなる、でもビールや白いワインを華やかにかえてくれるたのしい料理。
こういうちょっと肩の力が抜けた料理があってお店はたのしくなるんだ…、って思ったりした。お勉強。


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