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大好きだったメンチカツと生姜焼き

タナカくんが心から愛した洋食の店「キッチングラン」にやってくる。

近所にボクのオフィスがあって、一緒にしていた仕事があったから打ち合わせ終わりにふたりで来てたりしてた店。
彼はひとりでフラッとくることも多かったから、多分、ボクより彼の方がたくさん来ていたことになる。

L字型のカウンターの短い一辺にふた席あって、ふたりで来たときにはそこが定席。ボクが右側、タナカくんが左側と決まってて、今日は左側のタナカくんの席が空いてた。
そこに座ると厨房に奥までスルッと見わたせて、体の大きなご主人が料理をテキパキ仕上げる様子をここから見るのが好きだった。
注文するのはいつも「メンチカツと生姜焼きの盛り合わせ」。注文するとカウンターにカラーチップが置かれてそれが伝票代わり。

明るい緑のカラーチップがメンチカツと生姜焼き。
脇に置かれた白くて丸いチップは小ライス。
2人でくるとボクのご飯を半分、タナカくんに譲っていたから白いチップは見なかった。
ちょっと景色がよそよそしい。

お待たせしましたとメインのお皿にご飯に味噌汁。
お皿いっぱいに料理がぎっしり盛り付けられているのにニッコリ。

メンチカツに生姜焼き。千切りキャベツにケチャップあえのスパゲティー。メンチカツの上にはゆるめのグレービーソースがかかってて、千切りキャベツの山の上に薄切りきゅうりが一枚彩りそえている。いつもと変わらぬおいしい姿。

スパゲティーにはソースを少々。お皿の縁に芥子をポッテリおいて食べる準備の完了。
メンチカツの衣は厚めでザクザクカリっ。中はふっくらやわらかで味がしっかり入ってる。ジュースがたっぷり蓄えられてジュワリとにじみ、衣と混じって歯ざわりもよい。

生姜焼きはちょっと独特。ケチャップの味が生姜ソースに混じってて肉はかなり強めに焼かれて、奥歯をガツンと叩くおいしさ。脂がサクサク壊れる感じが心地よい。

オムライスにナポリタン。ケチャップ味の料理がなにより好きだったからね…、ここの生姜焼きが好きだった。ゆっくりゆっくり噛みしめるようにしながら食べてた。いつもボクが先に食べ終え、その横顔を見るのがボクは好きだったんだ…、ってしみじみ思う。また来ます。


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