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月命日の一日前の月命日

タナカくんの月命日は明日なんだけど、今日の夕方から出張になる。
代わりに今日。
彼の好きだったものを食べ、偲ぶ。

朝にオーバーナイトフレンチトースト。

ラ・バゲットのフランスパンの生地で仕上げた食パン「ミッシェル」。
ざく切りにして卵液に漬けてひと晩。
冷蔵庫の中で寝かせて染み込ませ、それをバターでこんがり焼き上げる。
メープルシロップとはちみつをハーフハーフにしたシロップをたっぷりかけてパクリと食べる。
焦げた表面はカリッとサクサク、耳はむっちり。ひと晩かけて漬け込んだから中はとろりとなめらかでまるでプリンを食べてるようなつややかな味。一口ごとに顔がほころぶおゴチソウ。

ヨーグルトに小さなリンゴを切って合わせてお供に食べた。水曜日。

そして昼はキッチングラン。神保町にやってくる。

タナカくんが東京の洋食屋さんの中で一番好きだった店。カウンターだけの小さなお店。調べてみたら1960年生まれでなんとボクと同い年。
先代のご主人が体を壊され数年休業。
このままなくなっちゃったらさみしいよねぇ…、って心配してたら身内の方が引き継いで今に至るというありがたさ。
ボクもまだまだがんばらなくちゃって、来るたび思う。

L字型のカウンターの短い一辺にちょうどふた席。そこがボクらの定席で、厨房の中が奥までみわたせるのもオキニイリ。
今日もそこに座って食べる。
注文するのはいつもメンチカツと生姜焼きの盛り合わせ。

千切りキャベツにケチャップあえのスパゲティー。メンチカツにはグレイビーソースがかかってて、千切りキャベツに一枚薄切りきゅうりが貼り付いている。いつも変わらぬおいしい景色。

ここの生姜焼きをタナカくんは大好きだった。

ちょっと変わった生姜焼き。ケチャップが入っているのかなぁ…、甘酸っぱくって生姜風味のポークチャップみたいな感じがするのが独特。肉も厚めで脂少なめ。噛みごたえがあってご飯もおいしくすすむ。

メンチカツの衣は厚め。ザクザク前歯で壊れるような感じがたのしい。ミンチの中に粗く刻んだ玉ねぎたっぷり、肉汁ジュワーッ。

お皿の縁に芥子をたっぷり。まずは千切りキャベツを全部食べ、料理の上にソースをたらり。ソースの甘みや酸味が料理の味をふくらます。
豆腐がたっぷり入った味噌汁。こわめに炊けたご飯もどれもタナカくんの好みだった。

うれしそうに食べる横顔がボクの一番のゴチソウだった。オキニイリ。


〆に「さぼうる」。

いちごジュースを飲みに来る。
神保町の待ち合わせでよく使ったお店がここ。山小屋風の造りのお店。壁はレンガで落書きだらけ。

一階に厨房。スキップフロアになった半地下、中二階が客席という秘密基地みたいな造りが独特。待ち合わせのときには入り口が見える中二階の席が定位置。食事終わりで一緒にくるときは落ち着く半地下が好きだった。
今日は半地下。
脚付きのゴブレットにたっぷり入ったいちごジュース。

表面に泡がブクブク、ぽってりとした飲み心地。
甘いんですよね…、イチゴの香りや酸味もしっかりしてるんだけど甘くて濃い。この濃さが好きだったんでしょうね…、ニコニコしながらゆっくりゆっくり飲んでいた。塩味のピーナツがおいしくってネ…、今日もポリポリかじりながらコクリコクリと飲みました。


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