雪紅梅。くずきりに抹茶グラッセ、虎屋の冬
やさしい甘さがボクを呼ぶ。
伊勢丹の地下の虎屋菓寮で家に帰る前にちょっとのんびりしようとやってくる。
ちょっと前まで壁を彩っていた栗の意匠の幕が変わって、白と淡い紅色のものになっていた。
「冬になったんですね」ってお店の人に言ったら「雪紅梅というんですよ…、と」。
たしかにとらやの棹物に雪紅梅っていう、紅梅にうっすらと雪がかかった情景を移したお菓子がありました。たった二色のかさねで景色を表する日本の感性にウットリしました。
くずきりをたのんでお供に抹茶グラッセ。くずきりは注文してから仕上げるからと15分ほど、冷たい抹茶でのんびりと待つ。おまたせしましたと大小揃いの漆のお椀。
大きな椀には水に浮かんだぶっかき氷。合間にゆらりとくずきり。不透明な乳白色で氷と一緒にのったり揺れる。羊羹の赤い紅葉と緑の葉っぱ。あたかも氷の上に積もった雪に木の葉が待って落ちた景色が見えるよう。
黒蜜をたっぷりまとわせトゥルンと吸い込む。口の中がたちまち甘さが広がって、むっちりとしたくずきりが口のすみずみを撫でてとろけて消えていく。
ここでくずきりを食べたとき、タナカくんが「大人になった気持ちがするね」ってボソリと言った。そそとしながらあでやかな味。やさしくなめらか、冷たいのだけど氷のようには冷たくもなくすべてに程よい。たしかに大人な味わいがある。そろそろ家に帰りましょう。
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