おいしい星にボクらは生きてたんだね…。
上等な洋食を食べましょう…、と伊勢丹の食堂街にある西櫻亭にやってくる。
思い出深いお店です。
タナカくんをなくしてしばらくの間、何を食べても味気なく生きるためのような食事をしがちだった。
駄目だなぁ…、と思いながらも緊急事態宣言下の都心では思うようにお店選びもできなくて、それが5月月末。伊勢丹が営業を再開したと言うのでやってきて、ここでひさしぶりに食事した。
サラダを食べてコーンポタージュでお腹を温め、メインをビーフカツレツにした。それが心にしみるようなおいしさで、あぁ、生きてるってこんなにステキなことなんだってしみじみ思った。
ボクらはおいしいものがある星に生きてた。ボクらがボクになってもおいしいものがある星のおいしいものはあいも変わらずおいしくて、それがうれしいと同時に哀しくって泣きながら食べたことを思い出す。
今日はコンソメでお腹をまずあっためる。
器が食卓に置かれると同時においしい香りが鼻をくすぐる。肉の風味に香り野菜の匂いが混じってもうおいしい。太陽色の透き通ったスープを一口。肉のうま味や焦げた油の香ばしさ。力強い甘みにスッキリした酸味。まるでステーキを食べているような風味、味わいが口の中に広がっていく。滋養に満ちたオゴチソウ。
それからオキニイリのガーデンサラダ。季節の野菜が何十種類も使われていて、今日のお皿はまるで春の花壇のごとし。葉野菜、根菜、豆にナッツにエディブルフラワー。
サラサラのサウザンアイランドドレッシングが添えられて、野菜の持ち味を邪魔せぬ程度のほどよい味で野菜ってこんなに多彩で豊かな味を持っているんだとしみじみ思う。
メインを二皿。
エビマカロニグラタンとメンチカツをたのんで食べるというのがここ数ヶ月のオキニイリ。
洋食のソースと言えばベシャメルソースとデミグラスソース。
その両方を味わうことができる料理の組み合わせ。
ベシャメルソースは軽い仕上がり。マカロニにまとわりつくのに十分なとろみはあるもポッテリではない。たっぷり入ったエビのプルンと弾けるような食感に、むっちり茹でたマカロニに細かなパン粉をサクッと焦がした表面が互いをひきたてとろけるおいしさ。
メンチカツは一個単位でたのめるところがありがたく、一個とたのんでも大きなお皿にソースを従え、ポテトグラタンにブロッコリ、甘いキャロットグラッセも添えられているのがなんとも贅沢。
細かなパン粉が立ち上がるようにカラッと揚がったメンチカツ。ナイフを入れるとサクッと切れる。細かなひき肉の間から、透明な肉汁がじわっと染み出し口に運ぶとホロリとほどける。
パン粉はカサカサ乾いているのにしっとりしていてみずみずしい。
デミグラスソースはなめらかにして濃厚な味。軽い酸味が肉のうま味やどっしりとしたソースのうま味を引きしめる。
マカロニグラタンにタバスコたっぷり。心置きなく使えるところが上等であっても堅苦しくない洋食屋さん…、って感じでうれしい。
マカロニグラタンをほぼ食べ終わり、メンチカツのサイドのポテトグラタンを器に移してデミグラスソースをかけてグラタンと一緒に食べる。口の中はお祭り騒ぎ。気持ちも明るくなりました。
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