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30年近く前の今頃のコト

タナカくんとはじめて会ったのは多分、今頃。
もう30年も前のコト。
知り合ったのはその年の桜の散りごろ。
インターネットのマッチングサービスで出会ったのです。
小さな写真とプロフィールにとても気になり、会いましょうよとボクから連絡するも忙しいからとなかなか機会に恵まれなかった。
あまり頻繁に連絡すると嫌われるかと思うも、1週間に一度くらいの頻度で、自分の生い立ちや趣味に近況と、付き合いはじめたカップルが話すようなことをメールに書いて送っていました。

返事があることもあり、ないこともあり。
でも彼が漫画やイラストを描いている人であること。
長崎出身で、東京にくるまで高松に住んでいたこと。
食べることが大好きで、高松の大学に通っていたときには洋食店でバイトをしていたこと。
そのお店がボクの父のなじみの店だったりして、タナカくんという人の輪郭が徐々にボクの中でできてきて、それでますます会いたくなった。

梅雨がはじまり、そして終わって、厳しい夏がはじまって、それでも会う日が決まらなくってもうメールで伝える特別なこともないほどボクはずっとメールを出し続け、それでも連絡したいから、家の窓から空の写真を一枚撮った。
そして「そろそろ秋かなぁ…、今日の空はこんなに青くて高いです」と書いてメールを送付した。
そしたらこんな返事が来ました。

来週の土曜日、仕事で近くまで行くのでお宅に伺ってもいいですか?って。

うれしかったなぁ…。
のちになんであのタイミングでボクと会おうと思ったの?って聞いた。

「空が青くて高い」って、夏目漱石の「月が綺麗ですね」みたいに思えて、本当に会いたいんだろうなって思ったからって。
「I love you」と言いたい心の叫びであったことには違いなく、今でもタナカくんに会いたくてしょうがなくなると空をカメラで切り取って撮る。
そしてその日のタナカくんの格好は、昨日のことのようにはっきり思い出せるのです。
今日はいささかセンチメンタルでございます。


雨上がりの午後、ボクは雷に打たれるのです

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