けんちん汁がおいしいそば屋にハズレなし
新宿御苑のそば屋の「志な乃」。
そばとうどんの合盛りたのみ、けんちん汁を追加する。
ボクはけんちん汁がおいしいそば屋にハズレなし…、って思ってる。
仕込みに手間がかかって、しかも日持ちするものじゃない。
真剣に作るとコストもかかるから、ある程度の値段で売らなきゃいけない料理で、売り切る度量がないとなかなかメニューにのせられない。
で、この店のけんちん汁がしみじみ旨い。
しっかりとした出汁に醤油、そして味噌。そこでコトコト煮込まれた大根、にんじん、ゴボウにこんにゃく、豆腐に青菜。豆腐なんて汁を吸い込み膨れ上がって角がとれ、口に含むとプルンと揺れる。飴色になった大根は噛むとクチュっと潰れて汁を吐き出すおいしさ。
風味付けのごま油に滋養を感じ、野菜をたっぷり食べているって実感の湧くありがたさ。合盛り用の薬味にタレがやってくる。
これがどちらもたっぷりなんです。
薬味はネギにわさびに生姜。
蕎麦はわさびだけどうどんは生姜…、という配慮です。
胡麻に刻んだ大葉に海苔と、薬味皿から溢れ出しそうなサービス精神旺盛具合。
タレは大きな徳利になみなみたっぷり。
首をつまんでほんの少々傾けるだけでトクトク音をたてて猪口に流れ出す。
淡い色です。薄味かしらと思って舐めるとびっくりするほど力強くてほんのひと舐めで舌の上に辛味や旨味、甘味、風味がひろがってしばらくずっと味の変化をたのしめるほど。
ネットリとしたとろける感じもしたたかあって、昆布をたっぷり使って仕上げているのでしょう…、ゆるゆるとした甘みがずっと舌に残ってウットリします。
そして麺。蕎麦は太めで、うどんは細打ち。蕎麦に比べてほんのちょっとだけ太さを感じる仕上がりでどちらもつやつや、みずみずしい。
そしてどちらも鍛え上げられコシがある。どっぷりつゆに浸してそこに薬味を乗せて猪口に唇つけてつゆと一緒に吸い込む。蕎麦はザラッとそば粉の食感。うどんはツルンとなめらかで、ところが噛むとどちらもガツンと奥歯に当たる。噛めば噛むほど風味が広がり、噛み続けてもタレの風味がなくならないのに感心します。
強めの味のけんちん汁に蕎麦を浸してしばらくおいて、麺に若干熱が入ったところで食べると、ねっちりとした食感なめらか。肉感的でこれもゴチソウ。
そばもうどんも気取った店の一人前ほど。全部食べるとお腹も満ちる。蕎麦湯をタレに注いだところにネギをくわえてふうふうゴクリ。ここのタレは薄めて飲んでも力強くて独特で、いつもながらに感心します。さて家へ。
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