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銀座の朝のちいさな憂鬱

トリコロールにひさしぶりにくる。

好きな店なんだけど、コロナが落ち着き人の移動が自由になって観光客が押しよせるようになってなんだか縁遠くなった。
韓国からお客さまが多いのかなぁ…、みんなカフェオレをグラスに注ぐ様子の動画を撮りにくる。
ピギーバッグを転がしてくる人もいてね。コインロッカーに預ければいいのに…、って思うけれど狭い通路にドンっと置く。サービスのじゃまになるのもお構いなし。
この店のみならずおなじみさんの贔屓でできていた店がおなじみさんのものじゃなくなり始めてる。
それでお店が潤うのなら良しとしなくちゃいけないのでしょう。
それでもなんだかさみしく感じる…、しょうがない。

モーニングセットを選んでたのむ。

お供はコーヒー。のんびり待ちます。
ズッと来ていていつも女性スタッフだけと思ってたら、今日は男性スタッフがいらっしゃる。とはいえ細身で仕草たおやか、お店のムードに溶け込んでるのがなんともステキ。言葉遣いもうつくしい。

トーストはよく焼きで…、とお願いしました。
待ってる間に次々お客さまがやってきて入り口脇から階段上までギッシリ行列。
時間は朝の9時過ぎです。
BGMはモーツァルト。
後宮からの誘惑の「優しさにお世辞を混ぜて」をかきけすほどのにぎやかさ。
優しさにお世辞を混ぜてもいい雰囲気とは言えぬ騒々しさに、かつての優雅に想いを馳せる。しょうがない。
思い立ったらスッと入れておだやかな空気の中で過ごす時間が喫茶店のよきところ。名所になると空気が薄くなっちゃう感じ。息苦しい。

朝食のメインが届く。

ほど良き量のグリーンサラダにトースト、ジャム、バター。朝を迎えるに必要十分なごちそうで見目麗しく状態も良い。まずはサラダをと食べていたらコーヒーカップがそっと置かれる。

お待たせしましたと銀のポットが差し出され、朝のコーヒーが注がれていく。
カップの上に湧き上がる湯気。湯気と一緒に立ち上がるコーヒーの香りに気分を直す。酸味おだやかで深い苦味のこのコーヒーは朝のお腹にやさしい味わい。ありがたい。

よく焼けたトーストです。

厚切りだけどサイズが小さく、その分、耳の割合が多い。よく焼くと耳がサクサクしておいしくて、最後にそれを楽しみましょうとパンの内側にバターやジャムをたっぷりのっけてまず味わう。

朝のお菓子のような味わい。

お皿に散らかるパン屑もバターとあえてペースト状にして食べて、コーヒーごくりと煽るようにして飲んで早々、席を立つ。


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