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てんぷら山の上。氷蔵庫をながめながら和朝食

ひさしぶりに山の上ホテルの山の上で和朝食。

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稀有なホテルです。部屋数は80もない。にもかかわらず飲食施設が6軒もある。フランス料理の店から日本料理に中国料理、コーヒーショップにバーとフルラインナップでどの店もそれぞれ評価の高い店。
昔から文筆家執筆のため缶詰になるので有名で、もしボクが分筆で名を成しここに缶詰になったとしたら、食べてばかりで筆が進まず絶対太るに違いない(笑)。
中でも日本料理の「山の上」は天ぷらの名店の誉高き店で、ここ出身と名乗ることは特級のお免状持ちの天ぷら職人であるというのと同じ。
ランチ以降は上等な天ぷらが調理されるカウンターを眺めながらはじめる一日のすばらしきこと。木肌がなめらかになるほど見事に磨き上げられたカウンターが、朝の光を一度飲み込み吐き出すように輝くさまに目を覚ます。

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ちなみにカウンターの中の壁に設えられているのが氷蔵庫。
密封性の高い保存庫に大きな氷をベッドのようにおき、冷気を蓄え食材を冷やす。
氷の冷気は空気を乾燥させることなく、素材にやさしい。
今日はたまたまドアを開け中の整理をしているところに遭遇しました。運良く氷のご尊顔を拝見いたす。

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和朝食がやってきます。

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焼き魚だけでなくマグロの刺身が供されるのがここの和朝食の特長的なところ。
刺身を提供するようになったのは今から5年くらい前からでしょうか…、朝から生物と最初はちょっと違和感をもったものだけれど、「日本の料理の基本的な構造」を朝から手軽に味わえるのは悪くないな…、と今では思う。海外からの人には特にうれしいもてなしなんでしょう。

焼いた魚は分厚いシャケで蒸気ではなく直火で焼いてる。
だから皮目がバリバリで脂が焼けた香りがなんとも香ばしい。
甘味を足さず焼いた厚焼き玉子は家では作らぬお店の味で大人になった気持ちがします。

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硬めにカチッと炊けたご飯と汁でひとそろえ。
今日の汁はなめこの赤出汁。
コクと渋みとさっぱりとした酸味が朝の口においしい。
ご飯のお供にぴったりの料理があれこれ多彩に揃う。
まずタラコ。
細かな魚卵の粒が揃った上等なタラコで、ご飯に乗せて一緒にパクリ。散らかるご飯に魚卵がからんで口の中をにぎやかする。
ここの名物の一つでもあるちりめん山椒。
しっとり炊かれて山椒の実がホツホツ奥歯を叩いてビリっと痺れを吐き出し潰れる。お腹の入り口がパカッと開く。
炊き合わせは絹ごし豆腐の厚揚げに大根、練り物、キヌサヤ。出汁がおいしいってすばらしいこと。
茹でたほうれん草に糸ガキの鰹節。ヤマクラゲと山菜をごま油で炒り煮したものとどれもそれぞれきっぱりとした味でご飯がすすむおいしさ。甘いもので〆をと水ようかんが用意されてて、父はこれが好きでここに通ってた。

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刺身の上にはたっぷりのワサビ。ツーンと鮮やかな香りが鼻から抜けてってマグロの旨味にくっきりとした輪郭つける。マグロならではの酸味もおいしい。ご飯の上に切り身をのっけてほんのちょっとだけあっためると脂がトロンとしてきて風味も強くなる。

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贅沢なおかずが多彩に揃う中、でも一番好きでおいしいのがここの梅干し。大きくどっしりした梅で、酸っぱく塩の風味が強い。昔の梅干しってこう言う大きさ、味だったよな…、って種を舌の上で転がし味わう。

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海苔の上にワサビをおいてパクッと食べて、気持ちもお腹も満ちました。


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