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アメリカのシェイキーズをおじさん天国にする方法

シェイキーズが日本にある小さなアメリカだった時代があった。
ボクが学生の頃。
もう40年近くも前のコトになるけれど、シェイキーズってお店は夜ニギヤカな盛り場の一角にあって、店に入ると中はほの暗くデキシーランドジャズが流れるアメリカだった。
ティファニーランプにピンボールマシン。
ジーパンにトニーラマに生ビール…、そしてピザってムードがプンプンしていたものです。

ランチのピザの食べ放題が人気でした。
大きなステンレスの皿にどっしりとしたアメリカンピザが用意され、8ピースにあらかじめ切ってあるのだけれど、そのひと切れでお腹が半分満たされるほどのボリューム感。
味、フレーバーは容赦なきアメリカでした。
具材のペパロニ、イタリアンソーセージ、そして時折パイナップルと、シェイキーズのランチバフェを食べると半日、鼻先だけアメリカに忘れてきたような気持ちになってしまうほど。

しかもそのピザが置かれるカウンターがアメリカ仕様。
日本人には少々高い位置にあり、とけたチーズをこぼさぬようにお皿に移すたび緊張をする。
でもその緊張感も含めて、それがシェイキーズという店だった。

今でもシェイキーズは日本にある。
ランチだけでなく、ピザとパスタが一日中食べることができるお店で人気もある。
ただ、アメリカ的ではなくなった。
先日、新宿の伊勢丹の向かいのビルの地下一階にある店を訪ねて、すっかり昔の店とは違ってしまったんだ…、としみじみ思った。

ちなみにピザとパスタの食べ放題は今の日本においてキラーコンテンツのひとつです。郊外ショッピングセンターで女性やファミリー客を集めるコンセプトのひとつでもある。
ただ、考えてみると炭水化物まみれの業態。
ピザとパスタの組み合わせだから、オシャレに見える。
けれどこれを日本の料理の置き換えるなら「お好み焼きと焼きそば」となる。それで女性を集めることができるかというとまず無理。
お好み焼きの方が野菜がタップリで、健康的にはバランスが取れてるはずなんだけど、ピザとパスタの魅力に負ける。「料理ブランド力」っていうのがあるんだろうなぁ。
それにおそらく、女性たちを集めることができるお店は「食べ放題」でなく「選びたい放題」と認知されてるように感じる。

ピザの1枚は大きいです。それをモクモクと食べるのじゃなくいろんな種類ピザを一切れずつ食べることができたらどんなにシアワセだろう。
ピザの味見。
テイスティング。
例えばピザがおいしいイタリアンレストランの№1ブランド、サルバトーレのランチバフェがそういう感覚。流行ってる。

ところがこの店。
あっという的に野郎の店です。ピザとパスタは女性のもの…、と先入観をもって店に入ると「あっと驚く為五郎」…、ほぼ全員がおじさんでした。
どこが違うんだろう…、と見てみると、バフェの状態に違いが見える。
まずサラダ。キャベツにレタスにコーンに枝豆。スライスオニオン、ブロッコリ。ビジネスホテルの宿泊料金についてくるサラダと同じ内容です。つまり「値段がつかない」サービス品。
サラダ以外はフライドポテトと、そこはかとなく男子仕様。ドリンクバーをつけて90分一本勝負。みんなフードファイターみたいにひたすら食べている。
つまりまさしく「食べ放題」。

ピザが小さい。
沢山の種類のピザをなるべく焼きたての状態で食べてもらおうといサービス精神からなんでしょう。
けれどサイズゆえ、ファミレスのピザのようにみえてしまう。
損してるなぁ…。
本物っぽく見えないんだもの。
ピザの種類も和風あり、ホットドッグ味あり、ポテトコーンやテリヤキチキンとなんでもありで、それが気軽で男性客を集めることに成功している…、といえば言えなくないからよし。
さっくり歯切れて食感軽快、焦げた香りもおいしい生地で、耳までおいしく食べられるのがいい感じ。スパゲティーは普通かなぁ…、ヨシダソースを使ったミートソースがあったけど麺がひ弱でソースを食べてる感じになっちゃう。ちょっと残念。

「バジルピザ、焼きたてです」と、料理が出来上がったタイミングでマイクで告げる。それを合図に立ち上がった人がぞろぞろカウンターに向かって歩いていくのがまるでゾンビの行進みたいでおもしろく、マイクを通した声もまたオモシロイ。
人って不思議なものでマイクを握ると女性は何故だかバスガイド、男は駅員みたいなしゃべり方になる。
肉声でも通る大きさの店なんだから、大きな声を張り上げてくれると威勢がよくなり、出来立て感が伝わるのになぁ…、って思ったりした。

それにしても「芋」がおいしい。日本離れしたアメリカなフレーバー。油をタップリ吸い込んでお腹をズシンと重たくする。昔からこれは変わらずおいしいなぁ…、としみじみ思う。腹一杯。

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