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ビフカツサンド

東京でカツと言えばとんかつ、大阪でカツと言えばビフカツ。
そもそも「肉」という言葉が持つ意味が、東京では牛も豚も鶏もなにからなにまでとりあえず肉。
けれど大阪で肉と言えばほぼ牛肉かなぁ…、肉じゃがも牛肉だし、肉うどんの肉も牛肉。ボクも東京に来た当初、肉うどんをたのんだら豚肉が入っていたのにたまげた。随分遠くに着たもんだって思ったものです。

大阪のビフカツサンドの話です。

なんばの御堂筋沿いに昭和風情の立派な建物。
「はり重」という上等な牛肉をずっと扱い続けている精肉店がある。
そこの肉を使ってもてなす、和食のお店、気軽なスタンド、そしてグリルが同居している。
おいしい肉でお腹いっぱいになりたければ、まずココに来て、あとは食欲、懐具合でお店を選べばなんとかなる。シアワセな場所。

一番好きなのは「はり重グリル」。
来るたび迷う。
ハンバーグもおいしいし、ポークチャップもいつも気になる。ステーキなんて、お好みの肉と予算を言っていただければいかようにもお作りします…、とさすがに隣に精肉店がある店ならでは。

迷いに迷っていつも大抵ビフカツにしてしまうんだけど、今日は目当ての料理があります。入り口脇のショーケースでその目当てがあるかどうかを確認し、お店に入って注文をする。

夏限定の冷たいコンソメ。

肉の端材がたっぷり出る店ならではの、豪快に材料を使い作ったコンソメは黄金色。
スープ自体がゼラチン質を含んでいるから冷ますと固まる。
ユルンタプンとスープボウルの中で揺れるコンソメの透き通っていてうつくしいこと。
スプーンですくって口に含むとたちまちとろけて、肉の旨味が舌に染み込む。
おいしいです。
スプーンの中では冷たかったはずなのに、舌の温度であっという間に適温になり香りや旨味が花開いていく。一口ごとに体に滋養がみなぎり元気になるような夏のゴチソウ。不思議なことに気持ちが満たされる片方でお腹が空いてく。メインのビフカツサンドがやってきます。

よく焼けたトースト。焼け目を見るとグリドル、あるいはフライパンの上で焼いたパンでしょう…、カサカサ乾いてしかも薄切り。
それで挟まれたビフカツの分厚くしかもうつくしいコト。芯は見事なロゼ色でパン粉は極薄。ソースを吸い込みパンの間から滲み出す。早く食べてとねだっているよう。

カツはやわらか。前歯いらずで切れてくれます。切れると同時にパンと一緒にとろけつつ肉の旨味で口を満たして消えていく。あっという間に消えてしまうから二口目からは慎重に。ゆっくり時間をかけて味わう。

軽い酸味の後味を残してなくなる肉の旨味をパンがもれなく受け止めていく。試しにレタスの葉っぱでビフカツ挟んで食べてみると、それはただのビフカツでやっぱりパンと一緒に食べると口の中が満たされる感にウットリします。
こういう料理が味わえる、大阪の人ってシアワセだなぁ…、ってしみじみ思う。オキニイリ。


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