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中国飯店で上海蟹と戯れる

今年一年、全身全霊を傾け頑張るエネルギーをもらいましょう…、と中国飯店でこの季節ならではのゴチソウ食べる。

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まぁ、冒頭の一節は贅沢に過ぎるゴチソウを食べるための言い訳でしかないんだけど、今食べておかないとまた一年ほど食べることができないゴチソウ。
上海蟹を心置きなくたのしむためのおいしい言い訳。
おまかせのコースをお願いしておきました。

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テーブルの上には蟹の殻を捨て置くための大きな壺。紹興酒をオンザロックで、お供に中国の緑茶の龍井茶をポットでもらい食事をゆったりスタートさせる。

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まず上海蟹の老酒漬け。
活きていた蟹が紹興酒の中で眠ったままおいしい料理になりました…、って感じのゴチソウ。生の蟹肉のトロトロした感触が水がほどよく抜けて酒の旨味や風味が入ってスベスベねっとりした食感になる。味噌はネットリウニのよう。殻をバリバリ奥歯で砕き、チュッチュと肉を吸い込み味わう。酔っぱらったカニを味わうボクの気持ちも酔っ払う。

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貪ったあとの指の香りがおいしい。カニ独特の香りと甘いお酒の匂いが混じり合って、ずっと嗅いでいたくなる。フィンガーボウルが用意されているんだけれど、すぐに指を洗ってしまうことがなんだか勿体なくて、しばらくずっと嗅いでたら、香りで再び酔っ払う。

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甘鯛とツブ貝の炒め物が続いてくる。黄韮にクワイにスナップえんどう、ゆり根にモヤシ、カラーピーマン。どれもがそれぞれ一番おいしい状態で整えられてるっていうのにウットリ。キュッキュッと奥歯をノックするようなツブ貝に、クチュッとつぶれる甘鯛もよし。
キレイに食べてお皿片付き、次の料理に向かうまでずっと指を嗅いでいた。

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さて前半の見せ場の料理。
上海蟹ミソかけふかひれの土鍋姿煮込み。
毎年、年始に新宿にあった維新號という店でフカヒレの土鍋煮込みを食べるのがもう20年近くの決め事だった。
なかば験担ぎの意味もあって、お金に苦労していたときにも欠かさなかった習慣が実は去年、その維新号が閉店しちゃって途切れてしまった。
なんだかそれがすごくさみしく、一年、なにか物事が思い通りにいかないときに、フカヒレ煮込みの呪いだなぁ…、なんて思ってしまっていたほどだった。
今年は代わりにこの店で。

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ザクザク歯切れる繊維たくましいフカヒレに、この上もなくなめらかな上湯スープ。口の中でパラッとヒレがほぐれてちらかり、ザクザク歯切れる蟹肉と一緒にさらりと流れ込んでくるスープも絶品。2年越しの正月がきたようなゴチソウ。ウットリします。

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さて今日のメインに上海蟹の姿蒸し。男の子と女の子の食べ比べ。
まず、これから食べる蟹の顔見せ。
大きく太って色鮮やかに蒸しあがった蟹。
蟹を食べはじめると殻を剥くのに一生懸命になって会話をなくす…、ってよく言われます。

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ところがここの上海蟹はお店の人が殻を剥き、肉をきれいにせせって甲羅に盛り付け直す。甲羅の中には卵と白子。男の子の方が大きく横に張っているから一目でわかる。

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蟹の胴の肉、爪の肉に足の肉とどれもが食べやすいよう下ごしらえされている。だから手を汚さずに手間いらず。苦労もしないですぐ食べられる。
なのに食べはじめるとやっぱり無言になってしまう。おいしくってただただ食べることに専念したくて言葉をなくす。上海蟹の魔力とでもいいましょうか…、ひたすら味わう。
卵はホロホロ崩れて散らかり、唾液を含んであっという間にネットリとろける。白子はムチュンとまるでマウスピースのように歯にこびりつき、強烈な旨みを残してゆっくり消える。
お腹を冷やす蟹のコト。お腹をあっため口をすっきりさせる生姜湯を最後に飲んで口をすっきり、リセットさせる。

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ダックの皮がカラメル状になって仕上がる北京ダックを挟んで肉料理。
中国飯店名物の黒酢の酢豚を食べたいと思ったのだけど今日の肉の料理は決して後悔させない出来栄えだという。
「フォアグラと和牛とイチジクの甘辛ソース」という名前の料理。
もしソースの名前がヴァンルージュソースであるとかバルサミコソースだったとしたら食材の組み合わせといいフランス料理。
どんなふうにしてやってくるんだろうと思って待つ。
やってきたのはやっぱり見事に中国料理。
フォアグラを牛肉で巻き、炒めたところにネギをたっぷり加えたチリソース。たしかに甘辛。しかも和牛の脂にフォアグラがとろけて混じってなんとも濃厚。他に類を見ない一体感に感心しました。中国料理の底力。

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〆は上海蟹ミソあんかけチャーハン。
ネギを具材にしたパラパラチャーハンに水分を出し切るまで熱を加えた卵白合わせ、生姜風味の蟹味噌餡をたっぷりかけて仕上げた料理。卵白のキュッキュッと音を立てる仕上がり、フッカリとした食感がなんとも見事で蟹餡のぽってり感を引き立てる。

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イチゴの杏仁豆腐とココナツパイでお腹に蓋する。これで一年、がんばらなくちゃとたのしくおいしい覚悟をします。おゴチソウ。


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