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かけかつ丼というオリジナル
荒木町の「鈴新」に来る。とんかつの専門店。
小さな店です。カウンターに13席。厨房から客席に行くには一旦、お勝手口から外に出て正面玄関から戻らなくてはならないほど。
白木のカウンターは見事にキレイに磨かれて、厨房器具もピカピカです。
ロースにヒレ、アジ、イカ、エビとフライメニューは多彩に揃いけれど人気はかつ丼。
煮かつ、かけかつ、ソースかつと3種類あって中でも「かけかつ丼」が独特でそれを目当てにワザワザ食べに来る人もいる。
揚げたてのカツを煮込むのでなくご飯にのせた上から玉子でとじた出汁をザバっとかけて仕上げる丼料理。かつ丼はトンカツの衣が出汁でしっとり崩れるようになったところがたのしむ料理なんだ…、と思えば邪道のように思えるけれどこれがなかなかおいしくて好き。
ちなみにタナカくんは煮かつ丼が好きで2人でくると両方たのんでサクサクカツとしっとりカツをふた切れゆずって食べていた。結局、どちらもおいしくてひとりの今ではかなわぬ贅沢。
家族でやってらっしゃって昔は調理がご主人、奥さんが配膳しながらサービスしてた。数年前に息子さんがお父さんを手伝いはじめ、今ではかつてお父さんのいた場所で腕をふるってお母さんが配膳。お父さんは厨房の外でサービス担当という、なんと自然でなめらかな世代交代。
しかも無口だった跡取りさんが今日は元気に「ありがとうございます!」って声を出す。料理は手が作るけど商売は口がするものなんだよね…、って思ってニッコリ。
シャーっとカツが揚がる音。
タプタプ玉子を溶く音にサクサク揚がったカツを切る音。
ご飯の上にカツをのせたらフツフツ煮立った玉子をかけて出来上がり。
蓋をちょっとズラしてのせる。
中に蒸気がたまらぬようにという気配りで、おいしい香りも蓋の隙間から流れ出して鼻をくすぐる。
蓋を開けると香りがひときわ華やかになり目にうるわしいかけかつ丼。
卵はほどよき半熟でとろんとなめらか。揚がったばかりのとんかつの上でつやつや輝いている。とんかつの両端の二切れ分にはかけずそのまま。細かなパン粉がカリッと揚がっているのがわかる。まず右端のひと切れ取り上げ丼の蓋に移してソースをかけてパクっ。
サクサクとしたパン粉衣が前歯をくすぐり肉が潰れて脂がジュワリ。とんかつソースの酸味とうま味ってなんでこんなに合うんだろう…、って思いながらとじた卵のかかったご飯をパクリと食べる。あぁ、天国だ!
甘み控えめで出汁のうま味や風味が際立つ卵とじ。シャリシャリ感を残した玉ねぎの歯ざわりもよく、揚がったばかりのパン粉の食感を残したかつの味わい格別。
丼の底に出汁が溜まってご飯をザブっとかきこみ食べる、この醍醐味はかつ丼ならでは。時間がたつと卵の出汁を衣が吸い込みちょっとしんなりしてきたりする。一度に3つの料理を食べた気になるたのしい料理。具材がたっぷりはいった豚汁。自家製ぬか漬けに今日の小鉢は厚揚げ煮。お腹いっぱい、オゴチソウ。
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