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これもひとつの「京風もてなし」?

おいしいご飯を食べたくて、赤坂見附の「やげんぼり」にくる。

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おひつにたっぷり収まった炊きたてご飯に京つけものと丁寧に作られたおかず。

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なかでもだし巻き卵がおいしいというので有名で、それに焼いた魚を一緒にたのんでご飯を思う存分食べてやろうと思って来た。
人気の店です。お店の前には小さな行列。10分ほど待ってカウンターの一番端のひと席もらった。

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板場の後ろに網代で組んだ衝立みたいな壁があり、その裏側で板前さんが二人がかりで次々だし巻き卵を作ってる。
席の前にはおひつが置かれ、半月盆に茶碗にお箸、湯呑に小鉢、漬物がズラリとすでに並べられてる。

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だし巻き卵と焼き魚をお願いします…、というと今日は焼き魚が無いという。板場の上にはおいしそうなサワラの切り身が並んでて、あれは?と聞くと今、塩を打ったばかりだからまだ焼くことができないんです…、と。あぁ、うらめしやと別の料理をたのんでだし巻き卵のお供にしました。

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さて、気を取り直してランチのスタート。つけものやちりめん山椒でご飯を食べてお腹の準備をスタートしましょう…、と。

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おひつの蓋をあけてびっくり。大きく深いおひつの中に申し訳程度のご飯しかない。その様子がまるでだれ方食べ残したようにも見えて、「これって間違いじゃないんだよね」と聞いてみた。
うちはおかわり自由だから最初は軽く一膳分しか入れないことにしたんです…、っていう答え。
昔みたいにご飯をもりもり食べる時代じゃないからおひつにたっぷりご飯を入れると残ってくることも多かったのでしょう。試行錯誤の末にこういうことになったんだろうと思うのだけど、ならばおひつに入れずに茶碗で一杯一杯、おかわりさせればいいのになぁ…。

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おひつに入れたご飯がおいしい理由は、おひつの木肌が余分な水分、お浮きを吸収するから。
それに自分で好きな分だけ茶碗にうつすたのしさもある。
ご飯は相変わらずおいしいんだけど、おひつはムード作りの道具でしかなくなったんだ…、と思うとちょっと哀しくなった。

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焼き魚の代わりにたのんだのはとても上等な山芋とろろ。
出汁で伸ばした中に漬けのマグロに温泉卵、青のりをぱらりとちらして味わう料理。出汁がおいしい。だし巻き卵に使う出汁と基本は同じ出汁だから食べているとだし巻き卵を予感させ、お腹がグーグーなってくる。ねっちりとした漬けマグロがなめらかとろろと一緒に口の中で壊れていくのがたまらぬおいしさ。オゴチソウ。

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大きな鍋で大きく仕上がるだし巻き卵。小さなまな板の上にうつして包丁でふたつに切る。切る分けたらお皿にのせて醤油であらった大根おろしを絞ってのせて出来上がり。

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これ以上、出汁を含ませたら固まらないんじゃないかって心配になるほどそれはみずみずしくて、幾層にも渦巻く玉子の間から出汁が染み出しお皿も口も潤わす。赤味噌の酸味もおいしい汁も出汁の風味が生き生きしていてニッコリ。ご飯もたっぷり味わった。
食べ終わったら余韻をたのしむまもなくお皿が下げられて、なんだか観光地のお店で来たような気持ちになった。これもひとつの「京気分」。しょうがないかと思う昼。


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