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パンケーキレストランじゃなくて朝食レストランだったらよかったのに…。

朝から蒸し暑いったらありゃしない。昼にはもっと暑くなると天気予報におどされて、せめてハワイと思い込もうと表参道のエッグスンシングスにやってきてみる。

パンケーキで行列を作った店です。のちにハワイアンパンケーキブームと呼ばれる「日本人っていつからそんなにパンケーキが好きになったの?」的不思議現象を起こしたきっかけの店でもある。
今では行列ができることはほとんどなくて、特に朝はひっそりしてます。
近所に「世界で一番おいしい朝食」を売り物にしたビルズがあって、くる途中にちょっと覗いてみたけれど満席、少々のウェイティング。
そしてその店のナンバーワン商品がリコッタチーズのパンケーキ(笑)。皮肉です。

ハワイのエッグスンシングスは朝食がおいしいというので地元の人が通う店だった。
開業時間がへんてこりんで、夜中から明け方くらいまでで、なのになんでこんな時間に朝ご飯をとるんだろう…、と不思議に思うほどににぎわっっていた。
観光業や物流業が産業のメインのひとつ。彼らの生活リズムは変則的で不思議な時間に朝を迎える。
それにハワイの経済はアメリカ本土に依存してて、例えばハワイとロサンゼルスの時差は3時間。西海岸のビジネスがはじまる時間にはハワイはまだ朝の6時でその時間にはオフィスにいなきゃいけない人にとっての朝ご飯は夜明け前。
そういうハワイのリズムに素直で、無駄にがんばらないのがまたハワイ的なる店だった。

アメリカの朝食といえば卵料理。手っ取り早くエネルギーになってくれ、食べやすい…、っということを考えればパンケーキほど便利な朝食メニューはない。だからパンケーキがおいしい店の朝はにぎやか。
エッグスンシングスがそういう店であったのだけど、日本に連れてきた人たちが「パンケーキレストラン」としてイメージづけをしたのですね。その極端なイメージ戦略が成功につながったけど、陳腐化と短命がセットでやってきてしまう。
飲食店は大ヒットより、長く続くことが大切。
一発当ててしまった末に人気がかげりはじめると、ひとつのヒット曲のおかげでずっと紅白にでてしまう演歌歌手のような憐れをまとってしまう。大成功の代償は大きいのです。

さてそんな北島ファミリーの一員みたいなエッグスンシングスの朝のことです。

ハワイの朝にいつもたのんで食べていたのがスクランブルエッグとスパムの朝食。卵料理のサイドの定番であるジャガイモ料理の代わりにスティームライス。芋の代わりにお米を使うという、この主食感覚がアジア的にてハワイ的。
本当はポーチュギースソーセージがあればベストだったんだけど代わりにベーコン。よく焼きでってお願いをした。

まずスパムを切ります。やわらかなスパムのことです、ナイフをそっと滑らせるだけでキレイに来れる。縦に7切れ、横に3切れ、4枚まとめて全部で84個の小さなスパムができる。
それを軽くスクランブルエッグと混ぜて食べると、スパムの塩味で卵の味がほどよく整う。
ベーコンふた切れをまた切り分ける。アメリカ流にバリバリに焼けているなら手で砕けるのに、日本のベーコンはどんなに焼いてもバリバリになってくれない不思議なことよ…、とブツブツいいながら細かくきってご飯も一緒にお皿の上を全部かしゃかしゃか混ぜていく。

フライドライスの出来上がりです。
ここで塩と胡椒をと思ってテーブルの上を見ると用意がない。
なるほどパンケーキレストランに塩と胡椒なんて無用の長物ってことなんだなぁ…、と代わりに醤油。
これは最初にお願いしてた。
にわかフライドライスの上からたらりと醤油をかけまわし、再び混ぜて食べるとなんともおいしいこと。
ふっくらとした炒り卵。スパムの脂とベーコンの香りと風みがぱらつくご飯と一緒に口をにぎやかにする。
コーヒーお供にパクリパクリとあっという間にお腹に収まる。
気づけばお店はちょっとにぎやか。アジアからの観光客がカメラ構えて食事をしてる。歌手でいうなら地方公演、海外巡業。
飲食店は自ら場所を変えないけれど、くるお客様の居住エリアが変わてしまうことですっかり自分の立ち位置までもが変わってしまうことがある。オモシロイなぁ…、オモシロイ。

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