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あと一ヶ月ちょっとの贅沢…。

新宿の駅はスゴイ勢いで変わろうとしてる。東京駅や渋谷、原宿とJRの駅が次々、令和モードに変身していく中にあって、新宿駅はずっと頑なに昭和のまま。

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ところがそれもまもなくおしまい。再開発ラッシュが特に西口側でスタートし、昭和な新宿の中でも昭和ムードが強烈でいぶし銀的お店が集まるメトロ食堂街もあと一ヶ月ほどでクローズ。
ここはずっとこのままであってほしいなぁ…、って思っていたけど願い叶わず。さみしい限り。

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狭い通路に古ぼけた店。古くはあるけど古臭くはなく、まだみずみずしくて長い年月を戦ってきたからこその余裕や安心を醸し出してる。どんなにお金を積んでも再び手にすることができない歴史を壊して新しくする。それが再開発というものと思うとなんだか禍々しい。

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一番人気でいつも行列ができてる「墨絵」は、早々に移転先を決めた。
けれどもここにくらべりゃ遠くて、新宿じゃなくて西新宿。しかも小さい店になるんだという。
他のお店はどうなるんだろう。
完全に終わってしまうまでにせいぜい通って思い出噛み締めなくちゃと、一番好きな永坂更科布屋太兵衛に来ます。

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そう言えば、お店の横の立喰コーナーで不動の人気を誇った春菊天がなくなっちゃったとき、あれ…、って感じた違和感は、そういうことだったのかもしれないな。なんて今となって思ったりする。

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今どきこんなサンプルケースが似合うお店もそうそうないでしょう。タナカくんなら何をたのむかなぁ…、と思ってメニューをみて、小エビ天丼セットをたのんだ。ご飯は控えめ、蕎麦は冷たい太兵衛そば。小さめのせいろが2段重ねでやってくる。

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2段分のそばを合わせて並盛よりもちょっと多めな感じの分量。
下段は普通のせいろ。
上段は海苔かけでしかもかまぼこと茹でて絞った三つ葉がのっかる。
さて食べ方をどうすればいいんだろう…。

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上を食べて下段を食べる。
それが普通なんだろうけど、海苔かけすきにしてかまぼこも好き。だから上段を一旦外して下段から。好きな海苔かけを眺めながらストイックにせいろを味わう。なかなか粋ではござんせんか。

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せいろの朱色の木枠に水がたっぷり打たれて、そばの表面もまたみずみずしい。麺はキレイに角張っていてすするとザラッと唇撫でる。噛むとネットリ、歯にからみつき蕎麦の香りを吐き出しながらスルンとお腹に収まっていく。
蕎麦って見た目は端正なのに口の中でのふるまいは艶っぽくって色っぽい。

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天丼のエビは小エビでくるんと背中を丸めて仕上がる。ぽってりとした衣がタレを吸い込んで、それが5尾。夏の野菜の代表のピーマンの天ぷらが彩りそろえてひと揃え。
ここはタレが2種類そろってやってくるのが特徴で、から汁、あま汁とそれらをちょうど半分づつ使って食べるのがおいしいんだという。ただボクはから汁メインで食べる。から汁はあま汁に比べてコクがあって、醤油の風味がキリッと凛々しい。

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タップリひたしてわさびをのっけ、ズルンとたぐると口いっぱいに広がる旨味。そばの香りにとろけに粘り。体全体が潤うゴチソウ。
あっという間にせいろ1枚分はお腹におさまって、海苔の風味をじんわりたのしみお腹が満ちる。残ったタレにネギとわさびをくわえてそば湯。出汁の風味をしみじみ味わい満たされる。


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