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月命日から月命日を生きる

25年つきあって生涯を誓った大切な人をなくしてしまった。
2020年の4月23日のこと。
今日は33回目の月命日。

享年56歳。
重度の糖尿病という基礎疾患があり、なのに病院嫌い。
コロナの院内感染を言い訳に、しばらく病院にも行っていなかった。
とは言え元気で、その日の前日には体調を壊したボクのために晩ご飯を作ってくれたほど。
明日の朝はお礼にボクが朝ごはんを作ってあげるよ…、って約束したのに、朝には冷たくなっていた。

それからしばらくは大変でした。
移動制限の真っ只中。
遠く離れた九州から動きがとれぬご遺族にかわって、彼を送るさまざまに忙殺された。
かなしむ余裕もないほどそれはいそがしく、大きな葬祭場にポツンと置かれた棺に彼が描いた絵を入れ花を捧げながらはじめて泣いた。

タナカくんの棺に一緒におさめたタナカくんが描いた絵

それからしばらく遺骨はボクの家にいました。
絵描きの彼が絵を描いていたデスクに居場所を作ってあげて、お祀りをした。
撫でたり、声をかけたり。
まだそこにいるんだと思い込もうとするも返事は当然なくて、その骨壷も2週間ほどでひとりで里帰り。

あぁ、本当にいなくなっちゃったんだなぁ…。
ボクはひとりになっちゃった。
ひとりになったってことはわかるんだけど、これからひとりでどう生きていけばいいのかどうにもわからず途方にくれた。

歩道や電車のホームの端に立てなかったり…。
住んでいるマンションの外通路は壁際じゃないと歩けなかったり…。
途方にくれた挙げ句、発作的に命を絶とうとするかもしれないと自分で自分がこわかった。
すべてが突然のことでしたから、準備も覚悟もないままひとりになってしまったから、なにがなんだかわからないかった…、というのがそのときの正直な気持ちでした。

なにをしていいのやら。
なにをしなくちゃいけないのやら。
まるで気持ちが前に向かって動かぬ日々を過ごしていたら、彼を亡くしてからずっと連絡を取り合っていた妹さんからこんなメッセージをいただきました。

納骨も、四十九日の法要も無事終わりましたが、母がいまだに兄が逝ってしまったことをうけいれることができず、さみしい日々をおくっています…、と。

18歳で実家を出て56歳で逝くまでの40年近く、ほとんど里帰りをしなかった。
だからお母さんはタナカくんのことを思い出そうにも小さい頃の思い出しかなかったのですネ。
一緒に住んでいたボクの部屋には思い出のものがたくさんあった。
ボクのカメラにはタナカくんの写真がたくさん。
お母さんの40年近い空白をちょっとでも埋めるお手伝いをできないか…、とボクは思った。

コメント入りのフォトブックや、額装した写真と思い出の品と手紙を一緒に月命日に間に合うように郵送します。

全部で6冊くらい作ったかなぁ…、一冊はお母さんに、同じものをボクの手元においている
昔、イベントのたびに重宝していたモンゴル衣装。着て撮った写真と一緒にお送りしました。絵はおおたうにちゃんが描いてくれたもの

確かに届きましたとお母さんから電話があって、思い出話に花をさかせて一緒に泣いたり笑ったり。
次の月命日にもまたお手紙を書きますネ…、ってもう33回。

先週の土曜日にお母さんから電話をもらって、土鍋ごはんの話になった。
タナカくんは土鍋でご飯を炊く名人で使い慣れた土鍋をお母さんにプレゼントした。
ひさしぶりの里帰りに大切に抱いて持っていき、お母さんにご飯を炊いてあげたんだ…、って言っていたけど、それが本当においしくて、先日、それでご飯を炊いてみたんですよって話をしながら感極まって。
聞いてるボクも一緒に泣いた。

「時間という薬」はなかなかふたりには聞かないようでまもなく3年というのにまだまだかなしくってしょうがない。

大切な人をなくした喪失感。
このさみしい気持ちと一緒にこれから死ぬまで付き合わなくちゃいけないのか…、と思うとそれは永遠のときに閉じ込めら得たような気持ちになってしまう。
1年後とか5年後とか。
死ぬまでだとか遠くに未来を置くのでなくてとりあえず一ヶ月間。

次の月命日までを生きてみよう。

そう思いながら33ヶ月。
まもなく3年。
生きてきたんだなぁ…、ってしみじみ思う。

それでも一ヶ月は長いんですよね…。
ぼんやりしてると生きるモティベーションがなくなってくる。
タナカくんと一緒にいたときは、責任感と言えばいいのかなぁ…、苦しいときでも気持ちがのらないときでも彼がいるからがんばらなくちゃと思ってやる気を沸かせてた。
一緒に生きる人がいてくれる。
頼ってくれる人がいると思う気持ちがボクを生かしてくれていた。
ひとりになると責任感をもつべき人を失って、仕事がないと一日ひと言もしゃべらぬぼんやりした日が続く。

noteでこのメンバーサロンを作ってから、気持ちにハリがもどりました。
わざわざメンバーになっていただいた方に対して、期待を裏切らぬように毎日、必ずなにかを話そう。
伝えよう。
そう思ったら次々、伝えたいことが湧いてきて今日一日を生きる元気が湧いてくる。

月命日と月命日の間の一日、また一日。
メンバーのみなさん…、本当にありがとうございます。
今日は全体公開とさせていただきました。

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