無駄をなくすと色気もなくなる…。
ひさしぶりにブルックリンパーラーにやってきてみる。
小規模店が多い新宿にあって珍しい大箱のカフェ。カジュアルだけど安っぽくなく、作り込まれているけれど大げさじゃない。
「人生における無駄で優雅なもの、ぜんぶ」というのが開業当時のコンセプトで、無駄で優雅なものは大好物。
だから昔はよく来てた。
料理も空間も、その空間を満たす音楽も好きだったけど、なにより気の利いたサービスが好きだった。なのに1年ほど前からよそよそしさを感じるようになった。
きっかけは導入されたモバイルオーダーシステム。
レストランのサービスで人と人とのふれあいを最も濃密に味わえるのが料理の注文をするとき。
世間話をしながら気持ちをときほぐし、今日のおすすめを説明したり、洒落た会話を交わしながらメニューを決めてく。しかもそのとき互いに親しくなることで、その後のサービスもスムーズになる。
まさに無駄で優雅なたのしみ。
それを全部、QRコードとスマホにまかせる。
メニューを作る「無駄」が省けて、人手や時間の「無駄」も省ける。
とても賢いシステムだけど、それって当初のコンセプトと矛盾する。
モバイルオーダーがすべて悪いワケじゃない。
自分たちの仕事をお客さまに押し付けた分、いかに挽回するかということを考えなくちゃいけないはずで、そういう工夫ができないお店は好きじゃない。
ちなみに開店とほぼ同時に入店したボクのテーブルの隣の席にカップル客を座らせようとする。
他に沢山テーブルは空いているから「ここでもなくていいですか?」って彼らはいう。それから何度か同じスタッフがボクの隣のテーブルにお客様を座らせようとするも、みんな別の席を選ぶ。ボクのせいかと凹んでしまう。
注文したのは「ローストチキンと色々野菜のメキシカンシーザーサラダ」。
キャベツにアボカド、紫キャベツの酢漬けにミックスリーフ。かぼちゃのグリルにミニトマト。すべて細かく刻まれて、茹でた玉子やキドニービーンズ、ガルバンゾ。砕いたトルティア、コリアンダーがメキシコ的な風味を添える。
ドレッシングが薄付きで、素材の持ち味を心置きなくたのしめるのがありがたく、そぎ切りにした鶏胸肉がしっとりとした食べ心地。
温めたバゲットがついてきて、それをちぎってサラダに混ぜる。
パンツァネッラ風の食べ方。野菜の種類が多彩な上に量がたっぷり。味は上等、パンは半分残してお腹がいっぱいになる。
席を立ってもお店を出ても「ありがとうございました」と声もかからぬさみしいランチ。なかったことにいたしましょう。
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