茶碗蒸し代わりのグラタン、ご飯のおかずの土鍋シチュー
銀座に出ました。築地近くの東銀座でお昼を食べる。
「銀之塔」っていうシチューのお店。
20年ほど前まで、築地場外の近くにテストキッチンを持っていたことがある。そこで仕事を終えるとこの界隈をぶらぶらして食事するのがたのしみで、この店もそんなときによく来てた。
タナカくんも好きなお店で、今日はなんだかなつかしい。
歌舞伎座の裏側にあって店はどっしりとした蔵造り。2階、3階にも客席があって、ボクは一階の入り口脇のテーブルが好き。今日もそこ。
なつかしいなぁ…、ひんやりとした蔵独特の空気にていねいに料理を仕上げていく厨房の中の気配においしい香り。
料理はシチューとグラタンだけの専門店。
その両方をたのしむことができるセットがあって、それを注文。
するとテーブルの上に小鉢2つと漬物がたちまち並ぶ。小鉢は蓮のきんぴらに大根なます。冷たいお茶と一緒に待ちます。
しばらくしてまずグラタンがやってくる。
小さなガラスのボウルに入って、表面のチーズが焦げてパチパチ爆ぜる音がする。焼けたチーズの香りが鼻をくすぐる先味。スプーンの背中でまずポンッと叩いて乾いた感覚たのしんで、ザクッと割って中のぽってりしたクリームすくう。
そう言えば、タナカくんがはじめてこれを食べたとき、スプーンを突っ込んだ瞬間に「あっ」って言って絶句した。
このグラタンにはぶつ切りにしたしいたけが入ってる。それ以外はエビだけでマッシュルームじゃなくてしいたけというのが、おそらく茶碗蒸しを洋食風に解釈したものじゃないかとボクは思ってた。そんなことを言うと彼。「なら、しいたけじゃなくて銀杏を入れればいいんだ」って。
大好きなグラタンに裏切られたような切ない気持ちになっちゃうよ…、って言いながらもしいたけをボクによこして残りは食べてた。
ねっとりとしたでんぷん質を感じる不思議なクリームで、味はしっかりしてるんです。
なにより焦げたチーズがおいしい。
だからそれからも、しいたけが入っていながらここのこれをたのしみに食べに来ていた。
なつかしい。
グラタンを召し上がったらシチューをお持ちしますからネ…、っていう気配りがRPGの次のステージに移る課題のようでもあって、猫舌の彼にあわせてのんびりゆっくり食べたものです。
シチューの到着。それに合わせて小さな茶碗にご飯もお供にやってくる。
土鍋の中はしばらくグツグツ。シチューにはビーフに牛タン、野菜にそれぞれのミックスがあり、今日はミックス。鍋の真ん中に絹さやひとつ。その緑の香りがずっと鼻をくすぐって大小さまざまのあぶくが鍋の底から浮き上がっては破裂する。
味わい豊か。洋食屋さんのシチューに比べて苦味や酸味はおだやかでご飯のお供に最適化した…、って感じの味わい。強い旨味に味噌のような芳醇な風味にウットリしながら食べる。
じっくり煮込まれ箸でほぐれる牛肉に牛タン。牛肉の方は脂がとろけて、口の中でクチャっと潰れる。牛タンは繊維がほぐれてキチキチ奥歯に貼り付くようなたのしい食感。
ご飯は硬めに仕上がっていて、シチューと一緒に食べるとご飯の粒がコロコロ舌の上を転がるような食感。シャキシャキ感を残して仕上がる玉ねぎにホクホクとしたニンジン、じゃがいも。最初は口の中にかいてた汗が気づけば頭の天辺からも噴き出したれる。おいしかったネ…、ゴチソウだった。また来よう。
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