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枕に浮き輪、それからエプロン

今日は命日。
もう4年も経つのにまだいなくなったことを完全には受け入れられない。
ひょっこり帰ってくるような気がするし、週末の朝、ぼんやりしてると「おはよう、お腹すいたよ」ってのっそり起きてくるんじゃないかと思ったりする。

もしタイムマシンがあって、一度だけ好きなときに戻れるとしたら確実に「2020年4月23日の午後10時」。
そしてそのままどんなにグズろうとタナカくんをタクシーに乗せ、慶應病院の救急センターに飛び込んで検査してもらうんだ。
もっと早い時間に行くこともできるだろうけど、その日、具合の悪かったボクのために作ってくれたうどんは本当においしくて、でも全部食べ切ることができずにお礼も言わず寝にいった。
それが10時ちょっと過ぎ。
だからお礼も言わなきゃいけないし、ボクがその日寝る前に起こった全ての出来事を忘れるわけにはいかないから、ピンポイントでその時間。

生きていくってふたつにひとつの決断で出来上がっているんでしょうネ。
右を選ぶか左を選ぶかで行き先が変わるように、人生だって容易に変わる。
あのときああしていればよかったなぁー、って思う瞬間はいくつかあって、たとえば父がしてはいけない投資の判断をしたあの瞬間。
ぶん殴ってでもやめさせてれば会社を整理することもなく、父も早死にすることもなかっただろうなぁ…、と思う。
思うけれども、一度だけ変えることができるのならば2020年の4月23日にボクが早く寝てしまったこと。
検死によるとその日の夜中から翌24日の午前3時くらいの間が死亡推定時間。
だからボクが夜更かししてれば不測の事態を避けることができたのかもなぁ…、って思って今でも後悔するもの。

あれからしばらく生きていくのが不安でどうにもしょうがなく、何を生きがいにすればいいかもわからぬ中でコロナに社会も病んでって、仕事をするのも辞めてしまった。
生きているけど生きてない…、そんな状況が1年続いて心不全で運ばれて、とうとうタナカくんに呼ばれたかって思ったけれど、まだ来るんじゃないって言われてまだ生きている。

出会わなけれどこんな悲しい思いをすることもなかったのに…、って思ったこともあったけど、今ではたとえ同じ結果になったとしても何度でも何度でも、生まれ変わるたびに彼と出会ってつきあいたいって思えるようにもなりました。

ボクが生きてる限り、タナカくんも生きているんだと思うようにやっとなりそれでもやっぱりしみじみさみしい。
たださみしがってばかりいてもしょうがないから、チャーミングだったタナカくんのことを思い出しては日記に書いたり手紙を書いたり。
そうそう、先日、こんなことを思い出した。

タナカくんのチャーミングポイントは「枕に浮き輪、それからエプロン」。

どこでも眠れるタナカくんは枕がなくても寝ていたし、海水浴が好きなわけでなく料理は好きでけれどエプロンなんかはしなかった。
それでもなぜだか枕に浮き輪にエプロンがタナカくんのチャームポイント3点セット。


二丁目のかわい子ちゃんの3点セットでもございます

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